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ブランとアリッサは、まだ明け方のヨルムの街を南区にあるスレプ通り目指して歩いている。アリッサは、元々冒険者なだけあって、あまり遠くなければ、馬車でなく徒歩で行くのが好きなようだ。
「よく晴れましたね」
「ああ」
端からみれば、介護士と老女が朝の散歩を楽しんでいるように見えただろう。誰も、まさか二人が殺人事件の現場検証に向かっているとは思わないに違いない。
「この事件、長引きそうですかね」
「どうかねえ」
出がけにブランは先輩のフリントに呼び止められ、ツールース施設長からの伝言を伝えられていた。
「今後も、この案件が解決するまでは、アリッサさんに同行することを最優先の勤務とするように、だって」
あの施設長ならそうきそうな気がしていたので、ブランは驚かなかったが、もはやアリッサの扱いは、治外法権の域に達しているなとは思ったのだった。
「あ、あそこですね」
スレプ通りは、ヨルム南区のはずれにある小さな通りで、両側にに石づくりの住宅が建ち並んでいる。そして、その通りの一画は、護法騎士たちによって封鎖されていた。平日の朝だというのに、数人のやじ馬らしき者たちが、騎士たちの周囲にパラパラといる。
アリッサが、無言で騎士たちの間を通り抜けようとすると
「ご婦人、ここから先は立入禁止だ」
騎士の一人に止められてしまった。
「これこれ、その方はよいのだ」
そこへ、騎士たちをかき分け、おなじみのハートストン魔道士が、メタボリックな体をゆらしながら登場した。
「いやはや、全く恐るべき事態になってしまいましたな」
ハートストンは、いつもにも増して冷や汗をかいている。
「すでにブン・ラッハ様がいらしてますよ、さ、どうぞこちらへ」
ハートストンに案内され、二人はいよいよ現場に足を踏み入れた。




