21
「さて、それぞれの自己紹介も終わった所で、いよいよ本題に入らせていただく。もちろん、我が息子レイモンドの誘拐についてだ」
ウォルターが一同をあらためて見渡す。
やはり、父親としての心痛もあるのだろう。自己紹介の時よりも、彼の表情にかげりが見える。
「事件の詳細については、秘書のヒルダ、及びハートストン魔道士から聞き及んでいると思う」
頷く者こそあれ、誰も口をはさむものはいない。
「本来ならば、騎士団を使ってその任にあたらせるべきなのだが」
ウォルターは軽くため息をつく。
「私もそうだが、我が国の騎士たちというのは、ことのほか魔法・魔術に疎くてね。まあ、ヒーリング部隊の治療魔法は別としてな。正直、犯人の捜査をしようにも、魔法使いが相手では完全にお手上げなのだよ」
それは、ブランにも共感できる感情であった。ブランも、アリッサと知り合うまでは、魔法など全く見たことがなかった。誘拐事件の捜査や推理をしようにも「それは魔法だから」と言われてしまえばどうしようもないだろう。魔法にできること、できないことがわかるのは、同業者しかいないのだ。
「ことに、今回の誘拐事件には、強力な闇の魔術使いがからんでいるのです」
ハートストンが、おずおずと話し出す。
「おそらく、わたくしごときの力では、とうてい太刀打ちできぬような次第でして。いや、議会付き魔道士としてはまことに情けない話なのですが、わたくしはいわば、事務方のようなものなので…」
「犯人からの連絡はないのですか?」
ダラスが、静かな声で質問する。




