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「では、時計回りということで。わたくしからでよろしいかしら」


にこやかに微笑みながら、神官の女が立ち上がる。


「ルテラ教ヒーリング部隊所属の神官、サリサと申します。部隊内では、シスター・サリサと呼ばれてますわ」


ルテラ教とは、太陽神ルテラを信仰する、大陸でもっとも信者の多い宗教である。よほどの辺境でなければ、たいていの街や村には、ルテラ教の教会が建立されている。

大陸中央の都市ルテニアには、ルテラ法王庁があり、各国への強い影響力を持っている。

フィン共和国は、法王庁と密接な関係にあり、弱小国家であるフィンが、他国からの侵略にさらされないですむのは、ひとえに法王庁の庇護を受けているからだといえる。

ヒーリング部隊は、法王庁がフィンに「貸し与える」形で、首都ヨルムに滞在させているルテラ教徒の集団で、人数こそ百と少数だが、いずれ劣らぬ治療魔法のエキスパートたちである。


「わたくし、ウォルター先生の著作を読ませていただき、その社会福祉、地域福祉に対する考え方には、大変共鳴いたしておりますのよ」


シスター・サリサは、瞳を輝かせて熱弁した。ウォルターも、にこやかに謝辞を述べる。シスターは、まだ話し足りない様子であったが、今が自己紹介のための時間であった事を思い出したようで、あわてて席についた。

つづいて、茶色いローブの老人がのそのそと立ち上がる。不機嫌そうな表情だが、常に不機嫌な人物なのか、たまたま不機嫌なだけなのかはわからない。


「イルユリで、魔道塾をやっておるガラムと申す」


「おお!!あなたがガラム老師ですか。かねがねご高名は聞き及んでますぞ」


ウォルターが声をあげる。

イルユリは、ヨルムのすぐ南にある、これまた大きな街である。そこにある「ガラム魔道塾」は、私塾ながら、魔法・魔術に疎いフィン唯一の魔力育成機関で、ガラム老師は、そこの塾長なのだそうだ。


「専門は、魔道解析論をやっとる。そもそも、我々の役目とは、魔力という未知なるエネルギーの組成を探り、探求してゆくことにその真髄あり。いたずらに、相手を傷つける力として魔力をふるうのは、大いなる誤りと考えておる」


そう言うと、ガラム老師は、チラッとアリッサに視線を送った。先ほどの発言には、明らかに当てつけが含まれているようだ。もっとも、気づいたのか気づかないのか、当のアリッサは、全く気にもとめていない様子だったが。


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