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その時、扉が開きハートストンが、二人の男をともない部屋に入ってきた。それを見て、ブランは思わず声をあげそうになった。一番最後に部屋に入ってきた男…なんと先日、居酒屋でブランに謎めいた予言をした、南方の男だったのだ。
首からドクロを下げたその男は、ブランとアリッサを交互に見つめると、何やら納得したようにうなづいた。ブランはアリッサに、彼こそが例の男だとささやこうとしたが、彼女に「わかってる」と言うかのようにうなづかれ、口をつぐんだ。
「ありゃ、呪術師だね」
アリッサのつぶやきがブランの耳に入る。
もう一人の男は、長身で、紺色のローブに黒く長いマントで身を包んでいる。手には、先端に赤い宝玉のついた金属製の長い杖を持っており、いかにも魔道士然としていた。フードを深くかぶっているため、その表情はうかがい知ることができない。
「それでは、これで皆さんお揃いになりましたので、ウォルター先生を呼んでまいります」
ハートストン魔道士が、そそくさと退出すると、会議室は重苦しい雰囲気につつまれた。
その中でも、一番気まずいのは、やはりブランであろう。いきなり呼び出された議員会館、しかも円卓を囲む自分以外の五人は、それぞれに名だたる魔法・魔術の使い手である。政界にも魔法業界にもまったく疎い、一市民である彼にとっては、まったく場違いな所に来てしまったといえよう。
お互いをライバル視するかのような、ピリピリした空気が飽和状態に達し、ブランが、気まずさのあまりトイレに逃げ込もうかと立ち上がった、その時であった。
一人の男が部屋に入って来た。