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面倒な依頼⑥

「さて。さっそく感知の魔法を使うぞ。」


 おれはダンジョンの最深部に降り立つと感知の魔法を使った。

 感知の魔法のレーダーには赤い点が無数に映されている。


「この赤い点は魔物か? 妙薬エリクサーの場所だけってわけにもいかないか。せめて見分けがつくようにはしておこう。」


 おれは感知の魔法を改良した。よし。青の点だったら宝箱の位置にしよう。


「近くの青い点は……うん。こっちだな。」


 おれは石の壁で作られたダンジョンの左の方に向かうことにした。

 宝箱までの道のりに赤い点の魔物も何匹かいるみたいだが、おれはステータスがカンストしてるから問題ない。

 ダンジョンの中は薄暗いが、魔法のような炎の明かりが等間隔で置かれていて、歩けないことはない。


「……もうすぐ魔物とエンカウントだ。」

「ゲェ! ゲェ!」

「さっそく来たな。」


 ダンジョンの曲がり角でおれはトカゲ人間みたいな魔物と出くわした。一、二……三体か。

 ふっ。先手必勝だ。おれは雷の魔法をトカゲ人間どもに食らわせてやった。

 バリバリバリバリッ‼


「ゲェエエ‼」


 おれの雷撃を食らいトカゲ人間どもが仰け反る。

 が、トカゲ人間どもはすぐに剣を構えておれに向かってきた。


「しまった! 魔物が強い!」


 おれは剣を抜いてトカゲ人間の剣を受ける。

 ちっ。油断したぜ。これがダンジョンの最深部か。

 おれが力を入れて剣を振り抜くと、トカゲ人間はバットで打たれたボールのように飛んで壁に激突した。


「面倒だ。一撃で斬り捨ててやる!」


     ◇


 一方、おれの部屋に残されたカトリーヌは部屋に戻った渚と対峙していた。

 おれの部屋でおれに言われたとおり大人しく座って待っていたカトリーヌを、渚が無言で見おろしている。

 カトリーヌがおずおずと渚に問うた。


「あ、あの、どちらさまでしょうか……?」

「……それは私のセリフですが。」

「ご、ごめんなさい。私はウェスブルク家のカトリーヌと申します。」

「そうですか。はじめましてカトリーヌさん。私は渚です。」

「な、ナギサさん……。すみません、勝手にお部屋に上がってしまって……。」

「いえ。」


 女子高生の制服姿の渚は「はぁ」とため息をつくと、カトリーヌに背を向けて言った。


「今、紅茶をお入れします。」


 そしてカトリーヌを部屋に残し、一人でキッチンへと向かった。


     ◇


 トカゲ人間どもを一撃で倒し、おれは宝箱の場所まで迷わず辿り着いた。

 感知の魔法があるから当然だな。


「宝箱を開けるぞ。中は妙薬エリクサーか?」


 おれはミカン箱くらいの大きさの宝箱の蓋を開いた。

 しかし、宝箱の中に入っていたのは白くキラキラと光る金属の鎧だった。


「なんだこれは。妙薬エリクサーじゃねえのかよ。」


 鎧か。もしかしたら高価な装備なのかもしれんが、今はただの荷物になってしまう。早く妙薬エリクサーを見つけないとならない時に、こんな重そうな鎧を持ち歩く余裕はない。


「見なかったことにするか。」


 おれは宝箱を閉めた。

 おれは感知の魔法の次の青い点——宝箱の位置を確認した。


「結構遠いぞ……。つーか、このダンジョンが広いんだな。」


 おれはステータスがカンストしてるから体力もカンストしてるので疲れたりはしないのだが、移動に時間がかかるのは変わらない。魔物も邪魔してくるしな。


「だが、やるしかねえ。」


 おれは次の宝箱の位置を目指して歩き出した。


     ◇


 おれの部屋。渚がカトリーヌに紅茶を差し出す。と言ってもティーバッグで入れたお茶だが。


「ありがとうございます。……良い匂い。とても品質の良い茶葉ですね。いただきます。」

「……。」

 

 カトリーヌがマグカップの中の紅茶を口に運ぶ。

 渚は無言でカトリーヌを見つめている。


「おいしいです。ありがとうございます。……少し落ち着きました。」


 カトリーヌがホッと息を吐いて言った。


「そうですか。」


 渚は窓の外に視線をやり、返事をした。


     ◇

 

「だあ! また妙薬エリクサーじゃねえじゃねえか!」


 今度の宝箱の中身はデカい盾だった。さっきから防具ばっかりだぜ。持ち歩けねえっての!

 どうする、おれ?

 どうやら妙薬エリクサーは相当レアなアイテムらしい。そりゃそうか。簡単に手に入るならカトリーヌがあんなデブの取引に応じるわけがない。

 おれが通ってきたダンジョンの道には、おれが倒したトカゲ人間やら、気持ち悪い大ムカデやら、石で出来たガーゴイルやらの死体や残骸が無造作に転がっている。

 魔物たちも切りがねえし、こんなことしてたら間に合わねえぞ。


「……そうだ。妙薬エリクサーをおれが創ればいいじゃねえか。怪我も病も呪いも全部直る奇蹟の薬だったか。おれは神様だから奇蹟だろうが何だろうがおれに創れないものはない。」


 おれは頭を切り替えて妙薬エリクサー創りを始めることにした。

 ダンジョンの床にあぐらをかき、手を合わせて念じる。

 するとおれの手の中に、さっきの店で見たのと同じような瓶が出来上がった。


「よし。次は鑑定だ。」


 おれは創った瓶が妙薬エリクサーかどうか鑑定してみた。

 赤。ダメだ、妙薬エリクサーになってねえ!


「これじゃさっきの偽物と同じ瓶だ。そうじゃない。本物の妙薬エリクサーを創るんだ。」


 おれはもう一度念じてみた。手の中に瓶ができる。

 鑑定。赤。


「なんでダメなんだよ⁉ そんなに難しいのか? 妙薬エリクサー一本創るのが?」


 おれは妙薬エリクサー創りを何度も繰り返した。

 おれの周りに偽の瓶が積み上がっていく。おれが創ってるんだからそれなりに効果はあるんじゃないかと思うが、妙薬エリクサーじゃない物を持ち帰ったんじゃ嘘になっちまう。それじゃクエスト失敗だろ。

 鑑定。赤。またかよ!


「くそっ。欲しいのはエリクサーだ。出てこい!」


 鑑定。青。またか! いや、青⁉


「青⁉ 本物か⁉」


 おれは手のひらの中の青く光る瓶を見つめた。

 これが本物の妙薬エリクサーか。確かに全然違うような気がするぜ。


「よし。これを持ってカトリーヌのところに戻るぞ。」

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