異世界No.2―ノクターナル―33
前回のあらすじ。
あれよあれよと母親の故郷に連れてこられた私、ノワール(黒豹)は父親がシマウマ柄のライオンであることを知った(割りとどうでも良かった)。しかも王様ときたもんだから色々と面倒な事になってしまうが私は元気です。
あと、愛馬のネロ(暴君)がキレたので保養地でのんびり・・・したかったんどけど我が儘王子が再来して今日もネロさんはご機嫌ななめ。
色々はしょったけどまぁこんなところ。
「そろそろお家に帰りたいなぁ」
とか呟いてみたけど、王位継承権とか面倒なことを片付けないと後々面倒だしねぇ。かなり下の方だけど持ってる事に違いはないので破棄しないと命狙われそうだ。ホント余所で殺ってればいいよ。私を巻き込まないで欲しいです。
「だからね、少しでも王位が上がったりしたら大変だからあのストーカーに怪我させないようにしてね?」
「フンっ!((( ̄へ ̄井)」
何てネロさんに言い聞かせたりしたけれど、昨日もストーカー王子を頭でどついていたのであまり効果なさそうだ。それでも怪我ひとつしないようだから頑丈なのか何なのか。ネロさんが手加減してるのか?
「それに腐っても王子だからね、怪我させたら国際問題に発展するかも知れないから抑えてネロさん」
「・・・( ̄へ ̄井)」
前足で地面をガツガツと掻いて不満を訴えるネロさんであった。抑えてくれネロさん。
などと話している私たちは今ちょっと豪華な山小屋風の建物の前にいる。ちなみに私はこの建物に滞在している。兄弟子は公爵家の屋敷に滞在している。何か広すぎて落ち着かないから私は離れの方にしてもらった。朝食とかいちいち食堂に集まってストーカー王子にジロジロ見られるの嫌だもん。朝御飯くらい静かに食べたいです。ちなみに私のご飯は冷たくなったスープと顎が痛くなるほど堅いパンでした。不味くはないから文句はないよ。ご飯抜かれてる訳じゃないしね。
こんなことで怒らないよ。食べれるものだし貴族ならキレるかも知れないけど、これくらい庶民は普通だし。まぁスープは温かいだろうけどね。パンはどこでも堅いよね。
いや、堅めのパン好きだけどね。スープに浸して食べるのとか。薄く切って溶けたチーズを乗せるのも美味しいよね。
ま、柔らかいパンの方がやっぱり美味しいんだけどね。
・・何でこんなパンの話してるんだろ。
※作者がリハビリ(無期限)中だからです。
あ、滞在してる所の話だったっけかな?
《結論から言って、現状家に帰れない以外は文句はないと言うことでは?》
「(そうだね、そうだったね)」
なんだか暇で暇で独り言も増えてきたんだよね。気が狂いそうなんだもの。昨夜も暇すぎて叫びたくなった夢を見たくらいには精神的にもちょっときてる気がする。
ノワールとして生きてきたこの数年は休みなく働いていたから何かしないと落ち着かない。あれ?これってワーカーホリックに片足突っ込んでない?
《大丈夫ですマスター。あなたはまだそこまでではないですよ》
そうかい。
《これからどうしますか?》
うーん、ひとまずネロの散歩に付き合ってそこらへんを十週位して、リンゴ食べて・・・昨日も同じことしてたな。
そして今日も来るのだろうストーカー王子(兄)よ。最近兄なのか弟なのか欲分からなくなってきたなストーカー王子。
あー、鉄の焼ける匂いが恋しい。熱した鉄を打つ音が聞きたい。この国に連れてこられるまでは日課だった仕事諸々がしたい。
でもだからと言って何か問題が起こって欲しいわけでもなく、ただ暇潰しがしたいだけである。
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《と言うわけで》
ネロの散歩をしていたら突然何かが飛び出してきてはねてしまった。そりゃあ車の全速力並の全力疾走中のネロさんが急に止まれるわけないもん。轢いちゃうよね車も馬も急に止まれないこれ常識。皆も気を付けようね、ノワールとの約束だよ。
《マスター現実逃避はその辺にしてください》
「あ、はい」
ちなみに轢かれた人はピンピンしてます。轢かれて直ぐに起き上がって「いやーすまん。キチンと前を見てなかったはははは」等と笑っていました。どんだけ丈夫なのよ。あのネロの剛脚に蹴られたりもしただろうに。こいつは不死身か?
「よう坊主。凄い馬を持ってるな。かなり痛かったぞ」
あ、痛みはあったのね。でも普通ならこの程度では済まないよ。
「すいません。ここには誰も居ないと聞いていたので」
「そりゃあ、そうだなうん」
ここは公爵家の私有地なので一般人は居ないはず。
《どうしますかマスター?不審熊さん》
クラウドさんの言う通り、この不審者は熊の獣人の様でだから頑丈なのかな?と割りとどうでも良いことを考えていた。
ほら、熊って頭に銃弾受けても数分は生きてて暴れるとかなんとか聞いたことあるもん。
《マスター現実に戻ってきてください。話が続きません》
「(ごめんなさい)」
怒られちゃった。
そしてずっと黙っていた私を見てポカンとしている。そりゃそうだよね。放置しててごめんなさい熊さん。
「あ、すみません熊さん。今更ですが怪我は?」
「ん?大丈夫だぞ。それよか━━━自分の心配をしたほうが良いぞ?」
「っ!?」
あっ、と思ったときにはもう遅かった。
違和感を覚えたのは胸の辺り。この辺りから生暖かい液体が絶え間なく流れ落ちて私の足元に赤が広がっていく
不思議と痛みはなかった。けれど指先やつま先は冷たく感じ、次第に頭がボーっとして腕も足も寒くなってくる。気づかぬ内に体は横たわっていたのか視界が横になっていた。暴れ狂うネロを視界に入れつつ呼ぼうと声をだそうも喉がひきつったか声は出なかった。
首も動かなくなっていたのか目線だけで胸を見ると剣の穂先が生えていた。胸から生えていたのだ。多分背中は傷付いてないので内側から生えたのかな?
確かめたくても腕が動かないので確認も出来やしない。
あぁ、ネロ。ゴメンねまた失敗しちゃったよ。
そうだよね、怪しいもんね、誰も居ないはずの場所で、使用人でもないのに、居るなんてね、はははは
こうして私の意識は遠退いた。




