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異世界No.1―アテナ―17

 話が進まないのだか……どうすれば良いのでしょう?


A,知らん



 ですよねぇ…(・・;)

 あぁでもない、こうでもないと、まだ話し合っているメリルご一行。


 私は置いてけぼりですよ。



 私は紅茶を飲みながらメリル達の会話を黙って聞いていた。


 どうも彼らは原作のゲームよりも早い魔王討伐成功に戸惑っているらしい。


 ま、原作があるからと言って必ずしもその通りになるとは限らないものだ。特にこの世界の未来を知っている者が複数居れば、何か行動を起こして原作クラッシュしても不思議じゃない。現に私の母親、麗春レイシュンや当時は敵対していた舞子は手段は違えど未来を変えようとしていた。


 自分の楽しみのためにひとつの世界を作り替えるなんてバカなことをするような奴だ……この世界がどんなことになっても所詮しょせんは奴にとってはこの世界もゲームと変わらないのだろう。


 いや、もしかしたら自分で操作するゲームよりも物語やアニメの様にこの世界を見ているだけなのかも知れないな。



 どっちにしても怒りが沸々と沸いてくる。




「――――からこれからの行動は尊重に…」

「でもさ、エスデカの奴が本当に魔王を討伐したのかよ?」

「ん~……多分頼まれたら引き受けそう。アイツ私の隣で勝手にゲームしてる所を見てたから……しかも序盤だけは知ってたと思うのよ……だから勘違いして魔王と仲が悪い国から依頼されたら討伐すると思うわ。魔王の役目も知らないと思う……」

「その“ゲーム”ってのをしてる所を……って事は部屋に入ってきたのかよ!?勝手にってそう言うことだよな!」


「腹が減ったなぁ~……」



 何だか話が脱線しそうだ。ルシェは通常運転で会話には端から参加していない。




「……うん。小さい頃からよく来てたから……その延長ね。お母さんには勝手に入れないでって言ったけど……勝手に入ってくるのよ。アイツの親も対して怒らなかったから……尚更……。」

「奴の親この世界じゃ袋叩きの簀巻きだな。親方は俺にも容赦なく叩くだろうさ。入ったりしないけどな。メリルの部屋には小さい頃から入るなって言い聞かされてたし…」

「え?お父さんそんなこと言ってたの!?」

「ん、まぁ。」



「腹が減ったなぁ……(チラッ)」



「お前は遠慮しろ」




 話し合いは小さい頃の話題に、そしてイチャついていた。ルシェは腹を減らして意気消沈してうつ向いていた…と思えばチラチラこちらを見てくる。


 食うもの寄越せって事ですね……だが断る。



「――もう、あの当時は私嫌われてると思ったのよ! お父さんめ……私の悩んだ時間を返せってんだぁ!」

「まぁ、まぁ、落ち着けって。俺も初対面で睨んだのが悪かったんだよ……本当、当時の自分の首を閉めたくなる……(あの時メリルを睨まなかったらどれだけ早く仲良くなれたことかぁ~……ハァ)」



 メリルは父親である親方のあんまりな対応に怒り、そんなメリルをなだめながら何かを後悔したような、多分昔の自分に憤りでも感じているのだろう。ドンマイヘタレ。



《ま、マスター……収集がつきませんよ?》

(こう言うのはほっとけ。)

《それと、あの………ルシェさんが頻りにこちらを見ているのですが……先程からの発言からお腹を空かしている様ですよ?》

(……そういえばそろそろお昼か……)



 仕方ないな。昼飯くらいは振る舞うか。


 誰かに料理を作ってないと腕がなまるし……せっかく藍苺のところに戻れたとしても料理の腕が鈍っていたら世話ないし。


 もしかしたら偽物かって言われたりして……自分で言ってて悲しくなった。


 例え私が料理が下手になっても……側に居てくれるかな?生前の頃から胃袋掴まれて着いてきたって影で言われてたし……あぁ、何だか自信無くなってきたぞ……


 リビングに備えられた暖炉の炎を見ながら物思いに耽った。違うと声を大にして言えない辺り私はホントに卑屈なんだなって改めて実感した。





「―――だよな。あ、そう言えばさぁ……宿でニーアの部屋にアイツ入ったんだってな。」


「んぁ?……あぁ、朝の事な」


「………(ぐぅぅ~)」


「………俺の分食うか?」


「!!食べる!!」


 腹ペコなルシェにマフィンを恵んでいるヘタレラルフ……そうやって食い物あげると今後付きまとわれるぞ。ま、何かあった時は助けてくれるさ。ルシェのやつはなかなかあれで義理堅いからな。



「お前ら昼飯食っていくか? ルシェ、お前の答えは分かってるから言わんで良い。そのキラキラした視線を向けるな……」


「おう!」


「え?良いんですか?」

「一応聞くけど……食えるものだろうな?機械オイルは俺らは無理だぞ…」



 おい、アンドロイドだからってオイル食ってねぇよ。ドンだけ昔の機械だよそれ。


 畑が有るのに何で主食がオイルだよってツッコめば「え?あれって売り物じゃないのか?」と言われたぞ。そんなに良いものでもないぞ収穫物は……


 アレ?基準がエルフだから違うのか?ん?



「あんなに上等な物が売り物じゃない……」

「売ったらどのくらいするんだよ……高いぞあの出来は」


「うむ、こいつの作る作物は旨いぞ。」


「そうだな。人様の畑から勝手に取って食えばそりゃさぞかし旨いんだろうな?」


「…………(汗)」




 場の空気がヒンヤリ下がった。そうです私がしました。後悔はしてない。今日こそはこの畑泥棒をトコトン追及してやろうか?



「(な、なんかヤバイ雰囲気だぞ)」

「え?えっと……そう、そうよ。ニーアさんは部屋にエスデカが侵入してきたのよね!ね?!」


「(た、助かった……目がマジだった……)」



 チッ……メリルに免じて今日は許してやらぁ……今度は覚悟しろよ。



 と、まあ。畑泥棒は今日は追及するのは止め、昼飯を作ろうと思う。久々の四人分の料理だ……ちゃんと出来るよね?






 ――ニーア自宅・キッチン――




 さて、何を作ろうか。スープは昨日の鶏とマッシュした野菜のスープにしよう。藍苺の好きな料理だ……ちゃんと食べてるよね藍苺……


 私がここでくよくよしても仕方ないか。スープは昨日の残りで良いとして、パンはパン種を焼けばいい。食いしん坊のルシェと見るからに食べそうな育ち盛りなラルフがいるのだ、多目に焼こう。


 保存庫にはソテー用の豚肉が入っていた。本当は豚じゃなくて豚の様なmonsterの肉だけど……よし、ポークチョップ風にしよう。ケチャップもあることだし……前に食堂・熊の手の女主人にケチャップの正しい作り方を教えてもらった。私が試行錯誤して作って出来たモノは水っぽかった。これで帰ったら作れる!味のバリエーションが増える!


 ………オッホン。えっと、我が家のポークチョップは豚肉を焼いてケチャップ風味のソースをかけるモノなので本来のポークチョップは知りません。悪しからず。


 昨日の残りのスープを釜戸に掛けて温める。比較的脂の無い肉を使ったから脂はあまり浮いてない……うん。少し濃くなってるね……水を足そう。


 さて、後はサラダでも………


「サラダは畑から野菜でも採って来るか……」


 サラダを何の野菜にするかを考えていると……



「この美味しそうな匂いは……」

「ニーアさん、何でもできそう……(悔しいなぁ……私もいつかは料理上手に……!)」


「この匂いは…!鳥と野菜のスープだな!」




 後の出口から身を乗り出してまるでトーテムポールの様にこちらの様子を伺っているメリル達が居た。黙ってじっとしてリビングで待ってられなかったのか?それほどお腹空いてたのか?



「…………おーっと、手が滑った!」


不穏な気配が背後でしたので牽制に投げナイフを彼らがトーテムってる柱に投げて突き刺す。ナイフを見たのか動きが止まった。


 どうせルシェ辺りが私が畑に行く隙につまみ食いでもしようも思ったのだろう。だが残念。私はそこまで甘くない。つまみ食いとお残しは許さない…が今の私のモットーです。今決めた。



「今度は覚悟しろよ?次は本当に無いぞ」


「な、何故解った!?」


「ねぇ、……今後ろ向かずに投げたよね?」

「あぁ、……そうだな、どうなってんだろうな?」



 片手で投げナイフをクルクル回しながらルシェを牽制する。効果は知らないがしないよりましだろう。それと、そこのメリルとラルフ。イチャ付くなら余所でやれ。藍苺に会えない私への当て付けにしか見えんぞ。


 もういっそお前ら付き合えよ。この無自覚両想いバカップルが。チッ………淋しい……淋しいよ。特に夜、寝るときとか……隣に藍苺が居ないから……あぁ……思い出したら何か悲しくなってきた……うぅぅぅぅ……(T^T)



「あ、あのさ……俺らも手伝えないか?」

「うん、何もしないのは……えっと……何だか居心地が…」


「客ならばじっと待っている方がニーアも楽だろう。」


「そうだな。今回に関しては同じ意見だな……だからといって、テーブルにスタンバってふんぞり返っているのは……イラつくぞ」



 今のルシェの格好は……腕を組、椅子に座り、テーブルの下に膝を引っ掻けて傾いている。あれは行儀作法に厳しめの母親を三人(前世産みの親と義理の親と今生の母麗春)持つ身としては、憤慨級の行為である。蹴っ飛ばして転ばせたい……が、それも行儀が悪いと留めた。チッ……




「姿勢と佇まいを正さないと飯抜きだぞ…」


「!!!」


「「早!」」



 言うが速いか、ルシェは直ぐ様姿勢と佇まいを直して行儀よくしていた……お前そんなに腹空かしてるのか? いったい日頃何を食ってるんだ?こいつの生活面が不安だ……今度エルフの族長に聞いてみよう。




「……はぁ……ならそのまま行儀良くして待ってな。俺は畑に行って野菜収穫してくるから……くれぐれも……くれぐれも、摘まみ食いはするなよ。ちゃんと分かるからな?筒抜けだぞ?な?」


「コクコクコク…」



 まるであかべこ。あのあかべこ可愛いよね♪ 婚前旅行でジンと言った会津……そこで手作り体験とかしたなぁ……もうかなりの時が経ったんだよね……年取ったなぁ精神的にも。


 ま、いいか。



 いまだに頷いているルシェと半笑いの二人を残してさっさと畑に行った私だった。



 だってさ、イチイチ構ってると日が暮れそうだもん。






 昼御飯を囲って談話中。




「モグモグ……あの、さっきはスルーされましたけど、あのエスデカに部屋に侵入されたって本当ですか?」

「……なんで、モグモグ……こいつの部屋なんかに……ゴックン……だってアイツの部屋階段のすぐ隣だろ……奥の部屋までなんで来るんだよ…なあ?」


「モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ」


「あ~……本人は寝惚けてとか言ってたな。所までがホントかは知らんが……」



 実際会話をしているのは私とメリルとラルフだけだ。ルシェは黙々とひたすらに口に詰め込んで食べている。よく喉に詰まらないものだと感心する。藍苺なら詰まってるレベルだぞ……



「………はぁ~」


 おっと、思わず溜め息が……あぁ……淋しいよ。



「(よっぽどなのね……)」

「(まぁ、寝てるところをいきなり襲撃紛いに来られたら……そりゃ疲れるだろうな精神的に)」

「(私もキレたわよ最初はね……でも、何か馴れて終いには部屋の鍵を3重にしようかと思ったわ……今思えば…かなり病んでたわ……精神的な疲れで)」

「(自宅のそれも自室に鍵3重っ……大変だったな……あ、何か泣けてきた……)」



 片やメリル達は仲良さげにヒソヒソと小さな声で会話をしている。が、私の高性能な耳には丸っと丸聞こえだ。私の回りにはヒソヒソ話程度ではプライバシーは保てないぞ?


 ちきしょー……リア充達め……末永く幸せになれっ!そして孫やひ孫に囲まれて天命尽きて老衰で永眠しろっ!!


 別に~、恋人が居ることだけがリア充じゃないし? 充実した日々があればリア充なんだよ……ま、私の場合藍苺ジンが居ないとリア充にはなれないけどな!


 どんだけ藍苺ジンに依存してるのか今の言葉で大体分かるよね!?



《マスター……ドンマイ

『我らも居るのだぞ……ま、藍苺とはまだ当分会えんがな』

(クラウド、そう言う親切心が追い打ちをかけることもあるのだよ? それと白神、お前は今日からゲスと語尾に付けろ。このゲス野郎が)

《マスターの心が…荒んでいく……》

『わかったでゲス』



 ………忘れてた。こいつはノリが良いから何のペナルティにもなりゃしねぇ…。それに何か聞いてるこっちがイラつくぞ。何だろこのイライラ……何?ホントに何なの?神じゃなくて紙ほどのフライドなの?ホントに神なのかこいつは……



「おい?大丈夫か?さっきからボーッとして」

「もしかして何処か具合が悪いとか……」


「モグモグ?」



 おっと……要らない事を考えていた。私がずっと黙っていた事に不信感を感じたか心配してくるヘタレラルフとメリル。そして料理を目一杯口に詰め込んでモグモグしながらハテナを飛ばすルシェ。


 気にしないで、ちょっと頭のなかで良い仕返し方法を延々と考えていただけだから。




 食事でヘタレラルフは野菜が嫌いでチキンが大好物というどうでも良いことが解ったが……ホントにどうでも良い。



 私達は魔王云々の話を全く進展させないまま食事を終えたのだった。














 ポークチョップってどんなのか知らんのですよ。私は。



 でも、紅蓮改めニーアさんの前世の家庭ではこんな感じで……な設定にしてみました。ポークチョップってホントにどんなの?



 それと、だんだんニーアが面倒見の良い兄ちゃんになりつつあるような……あれ?人嫌いはどこ何処?

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