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『ダンジョン配信のトップ層、まともな奴が一人もいない件』 〜規格外のソロ配信者5人が集まったら、同接1億の伝説パーティになりました〜    作者: うちの猫
一ノ瀬 零 編

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新・第41話『零の気だるげな暇つぶし』 ――暴かれた、呪いの副作用――

――「呪いは、まだ終わっていなかった」――


 ギルド本部・地下練習場に乾いた衝撃音が何度も何度も練習場へ響き渡る。


 ドゴォォンッ!!


 灰色の残像が一直線に駆け抜け、勢いを殺し切れずに石壁へ激突した。


「ぐっ……!」


 砕けた石片が辺りへ飛び散る壁にめり込んだ零は、小さく舌打ちすると首筋をガリガリと掻いた。


「チッ……またかよ。」


 少し離れた場所で見守っていた白雪が、穏やかな笑みを浮かべながら歩み寄る。


「一ノ瀬様。身体強化そのものは申し分ありませんわ。」


「ですが、急激に血流と体温を上昇させることで肉体だけが先に動いてしまっています。」


「脳と身体の速度が噛み合っておりません。」


「……分かってる。」


 零は壁から身体を引き抜き、大きく息を吐いた。性欲を無理やり昂らせることで血流を暴走させ、全身を強化する。


 それが今の零の自己強化。


 速い。圧倒的に速い。だが、その速さに身体が振り回されていた。


「愛染恋。」


 モストが振り向く。


「どう見る?」


 恋はスマホから顔も上げず、小さく肩を竦めた。


「速さだけなら十分じゃないかな?でも、あれじゃただ暴走してるだけだよ、自分で自分を振り回してる感じ。」


「それじゃ敵より先に壁に勝負挑んでるじゃん。」


「……うるせぇ。」


 零がぼそっと返す。


 恋はようやくスマホから視線を上げた。


「でも、伸び代はあるよ、身体が慣れてくれば変わると思う。」


 白雪も静かに頷いた。


「ええ、まずは自己強化を身体へ馴染ませましょう。」


 その様子を見ていたモストが大きく笑う。


「はーっはっはっは!!実に素晴らしい!一ノ瀬零!急激な成長には痛みが伴う!焦る必要はない!筋肉は努力を裏切らん!」


「また筋肉かよ……。」


 零は呆れたように頭を掻いた。



 数十分後、白雪による自己強化の訓練は一区切りを迎えた。恋が壁へ向かって歩く。


「じゃ、次、今度は遠距離。」


 零の表情が一気に曇る。


「……嫌いなんだよ


「知ってる。」


 恋は淡々と言った。


「でも使えないままじゃ終われないでしょ?一花ちゃんを守るためにも。」


「……。」


 その名前だけで零は黙る。


 右手のククリナイフを静かに構え、胸の奥が嫌でも思い出す。


 あの日。


 一花を抱き締めながら放った力、一花を襲った探索者へ向けて、怒りだけで解き放った呪い。


(……最悪な能力だ、なんで俺なんだよ。)


 零は奥歯を噛み締める。


「行く。」


 黒紫色の魔力が刃先へ集まり恋が壁際へ設置された的を指差す。


「まずはあれ狙って。」


 零は頷き放つ。


 一直線に飛び出した黒紫色の魔力は――


「っ!」


 途中で大きく軌道を逸れ狙いとは全く違う方向に向かい、魔力は訓練場の石壁へ突き刺さる。


 静寂。


 誰もが外れたと思ったその時だった。


 ドクン。


 壁が脈打った。


「……?」


 零が眉をひそめる。


 石壁の表面へ黒紫色の筋が一本浮かぶ。


 その一本は次第に枝分かれしながら壁全体へ広がっていく。


 まるで生き物の血管だった。


 ドクン。


 ドクン。


 ドクン。


「気持ち悪……。」


 恋が思わず呟く。


 白雪も息を飲む。


「石壁が……脈打っていますわ。」


 零は困惑したまま壁を見つめていた。


「こんなの……俺も知らねぇ。」


 モストがゆっくりと歩き出す。


「師匠。」


 白雪が声を掛ける。


「まだ不用意に触れてはいけません、何が起こるか分かりませんわ。」


 しかしモストは止まらなかった。


「分からぬからこそ確かめる。」


 そう言って壁へ手を伸ばし、大きな掌が黒紫色の脈へ触れた瞬間――


 ドクンッ!!


「……っ!?」


 零が勢いよく振り返った。


 心臓が一瞬だけ跳ねたような違和感。


 頭の中へ。


 誰かがそこへ触れたという感覚だけが流れ込んできた。


「旦那……。」


 零が呟く。


「……今、触ったよな。」


 モストは静かに頷く。


「ああ。」


 練習場が静まり返る。


「なんで分かったの?」


 恋が目を丸くする。


 零は自分でも理解できずに首を掻いた。


「分かんねぇ。」


「見たわけじゃねぇ。」


「でも……」


 自分の胸へ手を当てる。


「触ったって分かった。」


 白雪も慎重に壁へ指先を近づけた。


「では……失礼します。」


 指先が血管のような筋へ触れる。


 ドクン。


「……!」


 再び零の身体へ微かな感覚が走る。


「今度は白雪。」


 零は目を見開いた。


「また……分かった。」


 恋はスマホをしまい、壁を見つめる。


「偶然……?」


 誰も答えられない。


 零だけが、不気味に脈打つ壁を睨んでいた。


「……またか。」


 小さく吐き捨てる。


「またこんな胸糞悪い能力かよ。」


 誰も、その言葉を否定できなかった。


 零にとって、この力は決して喜ぶべきものではない。


 一花を壊した"性欲"という醜い欲望。その最悪の記憶と共に生まれた、この呪い。


 その呪いは――まだ誰も知らない、新たな性質を静かに見せ始めていた。


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― 新着の感想 ―
先日、拙作をお読みいただいた者です! ようやくまとまった時間が取れたので参りました。 たいへん読みやすく、読了させていただきました! とにかくキャラの濃さがすごいですね! 白雪琴音ちゃん、私の作品に…
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