第21話【恋の楽屋トーク】
(配信終了後。静かな楽屋。
ソファに座る恋の前へ、受付嬢・ひよりが紙コップのホットココアを差し出す。)
ひより
「はい、お疲れさま、今日は甘いのにしてみたよ。」
恋
「……ありがと。」
(両手で紙コップを包み込む。)
「なんかね今日のれん、ずっとドキドキしてた。」
ひより
「うん、見てたよ…いつもの営業スマイルじゃなくて、本当に緊張してる顔だった。」
恋
「だって……ギャルメイクも落としちゃったし。」
「可愛いって思ってもらえなかったらどうしようって……ちょっと怖かった。」
ひより
「でもコメント欄、見た?」
恋
「うん……『そのままの恋ちゃんが好き』って…『今日の笑顔、今までで一番可愛い』っていっぱい書いてあった。」
ひより
「そう、みんなが好きだったのは、メイクでも服でもなかった。」
「恋ちゃん自身だったんだよ。」
恋
「……えへへ、れんね?ずっと勘違いしてた。」
「可愛い服を着なきゃ、可愛いことを言わなきゃ、誰にも見てもらえないって思ってた。」
ひより
「でも本当は違った。泣いてる恋ちゃんも、笑ってる恋ちゃんも、ヒロくんを大切に想ってる恋ちゃんも、全部ひっくるめて、恋ちゃんなんだから。」
恋
「……うん。」
(ツインテールをそっと撫でる。)
「ヒロくん。」
「れん、少しだけ前に進めた気がする。」
ひより
「きっと見てるよ。」
「『その笑顔だよ』って。」
恋
「……えへへ、だったらこれからもいっぱい笑う。」
「今度は、誰かに認めてもらうためじゃなくてれんが笑いたいから。」
ひより
「うん、その笑顔なら、世界中が好きになる。」
(静かな楽屋に、小さな笑い声が重なる。)
恋
「……あ、でもすっぴん配信って、思ったより恥ずかしいかも。」
ひより
「ふふ。」
「今さら?」
恋
「……今さら。」
(二人は顔を見合わせ、小さく笑った。)
――ピツ、と小さな起動音が響き、買ってきたばかりのプライベートスマホの画面が白く明滅した。




