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『ダンジョン配信のトップ層、まともな奴が一人もいない件』 〜規格外のソロ配信者5人が集まったら、同接1億の伝説パーティになりました〜    作者: うちの猫
序章

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新・第2話『その男、筋肉』【後編】:『他人のバフは不要!孤独なウエイトトレーニングの果てに』

 ──ドォンッ!


 と風が爆ぜる。 

 普通の冒険者なら圧死を確信する、絶望の瞬間。


 だが、モストの目は死んでいない。 

彼は笑みを消し、野生の直感とこれまでの戦闘経験から、敵の攻撃の軌道、タイミング、そのすべてを脳内で完璧に見切った。


「フロント・ダブル・バイセップスッ!!」


 ──ドゴォォンッ!!!


 と大気が爆発するような衝撃音が響く。

両腕の力こぶを強調するそのポーズのまま、モストはオーガの超重撃を『大胸筋と上腕二頭筋』で真っ正面から受け止めた。 


 固有スキル【絶対筋肉障壁】がパキィンと白銀に輝き、鉄塊の棍棒が一瞬で火花を散らして弾き返される。


 目の前に浮かび上がるホログラムのコメント欄が、一瞬にして地上のリスナーたちの熱狂的な大歓声で埋め尽くされていく。


『キレてるよ! キレてるよお兄さん!!』

『上腕二頭筋が山脈みたいになってるぞおおお!!!』

『デカい! デカすぎるよモスト!!』

『僧帽筋が喜んでる!!!』

『ナイスバルク!!! 圧倒的ナイスバルク!!!』


 オーガロードも世界1位の肉体に本能的な恐怖を覚えたのか、目を血走らせて狂ったように連続で棍棒を振り回し、左右から嵐のような猛攻を仕掛けてきた。


 モストは一歩も退かない。 


 敵の連続攻撃の軌道を見切り、打撃が着弾するコンマ数秒の刹那に、次々とポージングを切り替えていく。


 左からの鋭い薙ぎ払い。モストは身体を横に向けて三頭筋を魅せる。


「──サイド・トライセップスッ!!」


 ──バシィィィンッ!!!


 と生々しい金属音が響き、棍棒が力強く弾け飛ぶ!


『腕が太すぎて丸太かと思ったわ!!!』

『三頭筋がハラキリ並みに割れてるぞ!!!』

『二の腕がもう別の生き物だよお兄さん!!!』

『三頭筋が怒ってる!!! 怒りのナイスバルク!!!』 


 間髪入れず、右からの強烈な叩きつけ。モストは広大な背中の広がりで受け止める。


「──バック・ラット・スプレッドッ!!」


 ──メキメキメキッ!!!


 と棍棒の鉄が悲鳴を上げて歪んでいく!


『背中がダンジョンの壁より広い!!!』

『広背筋が羽ばたきそう!!! 鳥かよ!!!』

『背主に鬼の顔が宿ってるぞおおおおお!!!』

『肩甲骨が叫んでる!!! キレてるよ!!!』 


 畳みかけるようなポージングリレーに、ボス部屋のボルテージは最高潮に達する。

オーガロードがさらに自身の肉体を赤く発光させ、部屋全体を揺るがすほどの最大魔力を込めて棍棒を頭上へと振り上げた、まさにその瞬間だった。


「──我が筋肉バフは、既にここにある!!」 


 モストの咆哮。

拳が真っ直ぐに突き出された。魔術も、武器の補正もない。純粋な『質量と速度と孤独の歴史』だけが生み出すポージング。


「──モスト・マスキュラーッ!!!!」


 ──ズバガァァァァァンッ!!!!



 激突したオーガロードの鉄塊のクラブは、モストの鋼鉄の大胸筋に触れた瞬間、その圧倒的な慈愛の圧力と衝撃波に耐えきれず、根元から木っ端微塵に粉砕された。 


 魔物は自慢の武器を失い、モストの放つ「筋肉の威圧オーラ」の前に絶叫しながら消滅エフェクトとなって消え去っていった。


『はい出た最強のモストマスキュラー!!!』

『大胸筋が歩いてる!!! 歩く大胸筋!!!』

『胸が! 胸が破裂しそうだよ!!!』

『筋肉の壁!!! 人類最強のバリケード!!!』

『はい優勝!!! 圧倒的優勝!!! ナーーーイスバァァァルク!!!』


 ◇


 ボスの消滅エフェクトが静かに輝き、広場に静寂が戻る。

モストは首にかけたお気に入りのタオルで爽やかに汗を拭うと、不敵なポーズを解き、いつもの優しく穏やかな表情に戻った。


「ふぅ。今日のパトロールも良い刺激(負荷)だったな。……よし、これでこのエリアの安全は確保されたな!」


 モストは消滅したオーガロードの光の粒子の中から、ドロップアイテムを拾い上げた。

それは、淡く輝く『超高純度の回復ポーション』。


「ガイズ、見てくれ! 素晴らしい回復薬だ!」 


 モストはそれを両手で丁寧に包むように持ち、カメラの前へ嬉しそうに掲げた。


「これをギルドの無料救護所に寄付すれば、今日怪我をした沢山の冒険者たちが助かるに違いない! 筋肉の神に感謝を!」 


 心からの慈愛に満ちた、本気の聖人の笑顔。

 しかし、コメント欄のツッコミは容赦がなかった。


『いや寄付するの優しすぎて聖人かよ笑』

『自分がヒール受け付けないからって他人に横流しするの草』

『筋肉の神、そんな優しいこと言う?笑』

『本人が一番ヒール必要な戦闘スタイル(ノーガード)なのに、他人の心配してて好き』


「おや、みんな、なぜ笑っているんだ? 私は大真面目だぞ? 身体を動かした後は、他人に優しくするのが一番プロテインの吸収にいいんだ!」


『プロテインの吸収関係ねえええええ笑』

『天然すぎるだろこのマッチョ笑』

『強さは人類最強なのに、頭の中が平和すぎて癒やされるわ』

『スパチャ¥10,000:その優しさにナイスバルク!!』


 好意的なコメントとスパチャの嵐に、モストは満足そうに大きく頷いた。


「よし、今日も最高の配信だった! ガイズ、私の筋肉に付き合ってくれて感謝する! それでは最後に、世界中の皆の健康と、ナイスバルクな明日に祈りを込めて──」


「──グッドバイガイズ! また次回の配信で会おうでわないか!! モーストォォ・マスキュラァァァアアップ!!!」


 ──バシィィィィィンッ!!! 


 全身の全筋肉を極限まで収縮させ、随行ドローンのカメラレンズに「ピキッ」とリアルな亀裂が入る。


 画面全体が筋肉の黒光りで覆い尽くされるという圧倒的なビジュアルの暴力。


 世界中のギルドの酒場は爆笑と大歓声に包まれ、配信画面はブツリと暗転した。


(第2話・完)


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― 新着の感想 ―
こんばんは! プロローグからずっと笑いっぱなしです( *´艸`) モストのキャラの濃さ、動きはもちろんですが、コメント欄のコメントがまた良いですね!私たち読者の思いを代弁してくれているので、面白さも倍…
X の企画で読みに参りました。ひとまず第2話までの感想です。 第1回で、主要キャラの紹介と世界観の説明を怒濤のように一気に済ませてしまうスピード感に圧倒されました。それぞれの冒険者たちもキャラが立っ…
今回も筋肉の圧が凄かったです(笑)。 前編以上にモストの「強さ」と「天然さ」が全開で、戦闘シーンなのにずっと笑いながら読めました。ポージングと戦闘をここまで直結させているのが、この作品ならではの個性…
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