第17話【恋の楽屋トーク】
――ピッ。
配信終了の電子音が鳴る。
静かになった控室。
ひより
「……。」
恋
「……。」
ひより
「……恋ちゃん。」
恋
「なぁに?」
ひより
「今回の恋ちゃん、ちょっと怖いです。」
恋
「えぇ〜!? なんでぇ!?」
ひより
「『受付のお兄さん、お疲れ様です⭐︎』
『お兄さんたちみたいな強い人がいると安心しちゃうな⭐︎』
『れん、お兄さんたちに守ってもらえるなら嬉しいな⭐︎』」
「……全部、計算だったんですよね?」
恋
「うんっ⭐︎」
ひより
「即答なんですね……。」
恋
「だって、れんは世界一可愛い女の子にならなきゃいけないんだもん!可愛いだけじゃ、世界中の人には届かないでしょ?だから使えるものは、ぜーんぶ使うの⭐︎」
ひより
「……人の好意まで?」
恋
「もちろん⭐︎有象無象の視線も!嫉妬も!お金も!ぜーんぶ、れんの燃料だよ⭐︎」
ひより
「……恋ちゃん。」
恋
「なぁに?」
ひより
「今、ものすごく可愛い顔で、とんでもないこと言ってますよ。」
恋
「えへへ〜⭐︎」
ひより
「褒めてません。」
恋
「でもね。」
恋の表情が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
恋
「ヒロくんが言ってくれたんだ…れんは世界一可愛いって。」
「だから……れんが世界一可愛いってことを、世界中の人に分からせるの。」
ひより
「……そのためなら、何でも利用する。」
恋
「うん。」
ひより
「たとえ、相手が自分に恋をしていると勘違いしていても?」
恋
「うん⭐︎」
ひより
「……本当に、ヒロさん以外には興味がないんですね。」
恋
「当たり前だよ。」
恋は胸元に手を当てる。
恋
「ここは、ずーっとヒロくんの場所だから。誰にもあげないよ⭐︎」
ひより
「……なるほど。そこだけは、最初から最後まで一切ブレてないんですね。」
恋
「うん!だから、安心してね⭐︎」
ひより
「……私は何を安心すればいいんでしょう。」
恋
「それでね!」
ひより
「はい?」
恋
「今回、インフィニティのみんなも、れんのこといっぱい見てくれるようになったでしょ?」
ひより
「……そうですね。」
恋
「だから、これでまた一歩、世界に近づいたの⭐︎」
ひより
「……恋ちゃん。」
恋
「なぁに?」
ひより
「その『一歩』の先に、何があると思います?」
恋
「もっといっぱいの人に、れんのことを知ってもらうこと!もっといっぱい見てもらって!もっといっぱい可愛いって言ってもらって!もっともっと同接を増やして――ヒロくんが見つけてくれた『れん』を、世界一にするの⭐︎」
ひより
「……。」
恋
「だから、まだまだ頑張らなきゃ!」
ひより
「……そうですね。」
ひよりは一度だけ、恋の顔を見る。
いつもの笑顔.いつものピンク色の髪.いつものハートの瞳だけど――。
ひより
「恋ちゃん。」
恋
「ん?」
ひより
「次回からは、少し気をつけてくださいね。」
恋
「?」
ひより
「人を利用するということは.利用した人から、逆に利用されることもあるということです。」
恋
「……。」
恋の瞳から、一瞬だけ笑顔が消える。
だが――すぐに、いつもの笑顔へ戻った。
恋
「大丈夫だよ⭐︎だって、れんは……ヒロくんの恋だから。」
ひより
「……。」
恋
「それじゃあ、みんな!」
「次回、新・第18話『その少女、クラッシャー【前編】:『狂いゆく男たちの嫉妬。カメラの前で引き裂かれる純潔の危機』!」
「れん、もっともっと頑張るからね⭐︎いっぱい見ててね?おつかれん〜っ⭐︎」
ひより
「……皆さん。次回は……少しだけ、恋ちゃんの『計算』ではどうにもならないことが起きるかもしれません。」
恋
「ひよりちゃん?」
ひより
「なんでもありません。」
恋
「えへへ⭐︎それじゃ――次回も、れんのこと見ててね?」
――ピッ。
カメラのランプが消える。
控室に静寂が戻る。
ひよりは、誰もいなくなった画面を見つめる。
ひより
「……恋ちゃん。あなたが『可愛い』だけで世界を動かせると思っているうちは……まだ、何も知らないんですよ。」
――そして。
次の配信が始まる。
世界中の視線が集まる、そのカメラの前で。
恋の『純愛』は――
初めて、本当の意味で試されることになる。




