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『ダンジョン配信のトップ層、まともな奴が一人もいない件』 〜規格外のソロ配信者5人が集まったら、同接1億の伝説パーティになりました〜    作者: うちの猫
愛染 恋 編

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新・第16話『純愛のハジマリ』【前編】:『初めての投げ銭で買ったプレゼント。可愛い服(武装)を纏って地獄へ』

ヒロを失い、血の池の中でただ一人きり、暗闇に取り残されたあの日から


れんの世界は、完全に色彩を失った。 スラム街の冷たいボロ小屋。一人では広すぎる布団の中で、れんは自分のピンク色の髪をじっと見つめていた。 


お腹が空いた。喉が渇いた。何より、寂しくて、今すぐにでも狂って死んでしまいそうだった。けれど、彼女の耳の奥には、彼が最期に遺したあの言葉が、鼓膜に焼き付いて離れなかった。


 ――『れんは、笑顔が一番可愛いんだから笑ってよ』 

――『俺、お前のそのピンクの髪のツインテールと、笑顔が……本当に、世界で一番、大好きだから……』


「……うん。れん、笑うよ。ヒロ」


 れんは立ち上がり、スラムの濁った水で顔を洗った。 ヒロが世界で一番大好きだと言ってくれた、このピンクの髪。ヒロが可愛いと言ってくれた、この笑顔。 ヒロを死なせてしまった私が、彼の遺してくれたこの宝物を、世界から否定させるわけにはいかない。


有象無象の冷酷な世界に、ただ認めさせてやる。ヒロの愛した私が、どれだけ綺麗で、どれだけ可愛くて、どれだけ正しいかを、世界の全員の脳裏に力づくで認めさせて(刻み込んで)やる。


 それが、れんの『ダンジョン配信探索者』になるための、狂気的なまでの誓いだった。 お金などない。魔導スマホなんて高級品、持っているはずもない。 れんは泥にまみれたボロ服のまま、街の冒険者ギルドへと向かい、探索者の登録を済ませた。


そして、ギルドが新人用に無料配布している、最低限の機能しかついていないおんぼろの『自動追尾型魔導ドローン』を1機、震える手で受け取った。 おんぼろドローンの前に立ち、れんは不器用な手つきで、自分のピンクの髪を高い位置で二つに、ツインテールに結び直した。 ドローンのレンズ(鏡)に映る自分の顔は、悲しみでひどく引きつっていたけれど――。


 れんは口元を両手でグッと引っ張り、必死に、完璧な「可愛いギャル」の仮面を被って見せた。


「ヒロ……見ててね。れん、世界で一番可愛い笑顔になるからね」 

ドローンの起動スイッチを押す。 


アカウント名【れん】。チャンネル名「【新人ギャル】れんのダンジョンお散歩配信⭐︎」の生放送が、スラムの境界にある第1階層の入り口で、静かにスタートした。



最初は、同接数(同時視聴者数)など『0人』だった。 誰も、スラム出身の小汚い新人の配信など興味はない。


しかし、れんは諦めなかった。カメラに向かって、血を吐くような孤独を隠し、大真面目に、何度も何度も練習した最高の『デレ挨拶』を放ち続けた。


「おつれん〜っ⭐︎ ねぇねぇ、今日もれんのこと一番に考えててくれた? れんね、みんなの『大好き』の声がないと、寂しくて死んじゃうんだからね? 今日もいーーっぱい甘えさせてねっ!」


 何もない通路。魔物すら出ない寂しい一本道。それでも、彼女の瞳の奥でピンクのハートマークが妖しくきらめく。 その、必死さの裏に本物の「壊れた狂気」を秘めた圧倒的なビジュアルの魔力に、ネットの男たちが一人、また一人と、引き寄せられるように目を留め始めた。 


同接数が、10人、100人、1000人へと、新人としては異常な速度で跳ね上がっていく。


『え……この新人ギャル、めちゃくちゃ可愛くないか?』

『距離感バグってて最高なんだが』

『なんか目が、視線が離せない……。ずっと見ちゃう』 


その時だった。通路の奥から、ニタニタと下卑た笑みを浮かべた『ゴブリン』の群れが現れた。 かつて、ヒロの命を奪った、憎むべき緑色の怪物。 ゴブリンたちは鋭い牙を剥き出しにし、血走った眼光でれんを激しく睨みつけてくる。 生々しい殺意の視線。


しかし、過酷な孤独の限界にいたれんの脳内フィルターは、その視線に、かつて自分を命がけで愛してくれたヒロの熱い眼差しを重ね合わせて幻視してしまう。


「――わぁ……! ねぇみんな見て? あの魔物さんたち、れんのことをそんなに血走った目で、じっと見つめて……。そんなにれんのことが欲しいんだ? れんを独り占めしたい(愛したい)くらい、れんのことが大好きなんだね……?」 れんが両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、魔物たちの殺意へ向けて、満面の、本気の愛の笑顔を返した、まさにその瞬間だった。


 彼女の胸の高鳴りと連動して、

固有スキル【純愛過剰負荷ピュアラブロード

が配信画面の向こうで初めて炸裂した。


 ――ミシ、ミシミシミシッ!!!


 空間が歪み、漆黒の超重力が部屋全体へズドンと降り注ぐ。「ぶふっ!?」とゴブリンたちが一瞬で床へとペシャンコに叩きつけられ、その強固な骨を木っ端微塵に粉砕されて消滅エフェクトへと変わっていく。 その圧倒的なギャップと凶悪な強さに、配信のコメント欄が文字通り大爆発を起こした。


『おいおいおい! 見た目デレデレギャルなのに能力チートすぎるだろww』

『重力魔法!? 新人なのにワンパンかよ!!』

『殺意を愛と解釈するの最高に狂ってて好きww』

『スパチャ¥10,000:一目惚れした! これから全力で推す!!』 


初配信は、ギルドの歴史に残るほどの大バズりを記録した。 配信終了後、おんぼろドローンの口座に振り込まれたのは、スラム街では見たこともないほどの莫大な投げ銭(大金)の通知。 れんはそのお金を持って、きらびやかな商業街へと向かった。 普通の女の子なら、真っ先に自分のための贅沢品を買い漁るだろう。


しかし、彼女が向かったのは、高級なガラス細工と綺麗な装飾品が並ぶ店だった。 れんは、あの日自分がダンジョンへ行き、死なせてしまったせいでヒロに渡すことができなかった、世界で一番綺麗な『星の結晶のブレスレット』を、震える手で買い求めた。


 彼女はそのまま、スラムの裏手にある、草の生い茂る静かなヒロのお墓へと向かった。 墓石の前にその綺麗なプレゼントをそっと供え、れんは静かに涙を流す。


「ヒロ……遅くなって、ごめんね。これ、れんが初めて自分の力で稼いだお金で買った、ヒロへのプレゼントだよ。……ずっと、ずっと、大好きだからね」


 届かない温もりへ祈りを捧げた後。れんは涙を拭い、立ち上がった。 次に彼女が買ったのは、ピンクの地雷系のギャル服、きらきらした最先端のメイク道具。

 ヒロが「世界で一番大好き」だと言ってくれた自分を、さらに完璧に、誰にも文句を言わせないほど美しく作り上げるための


――これは、彼女にとっての世界と戦うための『武装』。 完璧なギャルのメイクを施し、リボンのついた可愛い服を身に纏い、れんは再び、おんぼろドローンを従えてダンジョンの入り口へと向かった。


 ヒロの愛した私を、世界の全員に認めさせるために。 だが、そのあまりの美しさと、誰にでも「大好き⭐︎」と言って手を取る

全肯定ムーブのせいで


――ギルド内の男たちが、「あの子、俺に気があるんじゃ……」と一斉に邪な目を向け始めていた。

「続きを読みたい!」と思ってくれたあなた!


その気持ち、ブックマークで私に届けてくれると嬉しいな♡


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感想も大歓迎だよ!

みんなの言葉、ちゃんと私に届いてるからね♡


それじゃあ――


次の物語でも、また会おうね♪


「ねえ……私のこと、忘れないでね?」


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