第15話【恋の楽屋トーク】
――ピッ。
配信終了の電子音が鳴り、ダンジョンの片隅に静かな空気が戻る。
恋は、いつものように元気よく「おつれん〜⭐︎」と言おうとして――少しだけ言葉を止めた。
恋
「……えへへ。今日は、ちょっと泣いちゃったね。」
恋は指先で、自分のピンク色のツインテールをそっと触れる。
恋
「この髪ね、れん、昔は嫌いだったんだ…変だって言われて…気持ち悪いって言われて…だから、隠してた。」
「でもね……一人だけ…世界でたった一人だけ、『綺麗だよ』って言ってくれた人がいたの。」
恋は少しだけ笑う。
だけど、その笑顔の奥には、どうしても隠しきれない寂しさがあった。
恋
「だから、れんは今でもツインテールなんだ♡笑うのも…可愛い服を着るのも…みんなに『大好き』って言うのも全部、その人がくれた宝物だから。」
静かな沈黙。
すると、控室の扉がそっと開く。
ひより
「……恋ちゃん。」
恋
「あ、ひよりちゃん。」
ひよりは、いつものように温かい紅茶を机へ置いた。
ひより
「今日は、無理して笑わなくていいですよ。」
恋
「え?」
ひより
「だって今日は……きっと、画面の向こうのみんなも、恋ちゃんと一緒に泣いてますから。」
恋は少し驚いた顔をする。
恋
「みんなも?」
ひより
「はい、コメント欄、すごかったですよ?
『恋ちゃんを守りたい』
『一人で泣かないで』
『ヒロさんが守った笑顔を、俺たちも守る』」
「そんな言葉でいっぱいでした。」
恋
「……そっか。」
恋は胸の前で手をぎゅっと握る。
恋
「れんね…本当は、ずっと怖かったんだ。もし、みんながいなくなっちゃったらどうしようって…また、一人ぼっちになったらどうしようって。」
ひよりは優しく微笑む。
ひより
「大丈夫です!恋ちゃんは、もう一人じゃありません。」
「画面の向こうにも!ギルドにも!恋ちゃんを大好きな人が、いっぱいいるんですから。」
恋
「……えへへ。なんだか今日のひよりちゃん、ずるい。」
ひより
「どうしてですか?」
恋
「そんなこと言われたら……れん、もっとみんなのこと好きになっちゃうもん。」
ひより
「それ以上は危険なので、重力は抑えてくださいね?」
恋
「あれぇ?」
ひより
「今日も分かってませんね。」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
恋はカメラへ向き直る。
恋
「みんな今日も最後まで見てくれてありがとう。」
「れんね、ヒロにもらった宝物を、ずっと守っていく!だからこれからも、いっぱい笑うね。」
「みんなも、れんのこと……ずーっと見ててね⭐︎」
控室の外では、若手冒険者たちが小声で話している。
「今日の話、泣いた……。」
「ヒロって、恋ちゃんの原点だったんだな。」
「だからあんなに重い愛なんだ……。」
恋はその声を聞き、少し照れくさそうに笑った。
ひより
「それでは皆さん!」
「次回、新・第16話『純愛のハジマリ』【前編】――『初めての投げ銭で買ったプレゼント。可愛い服(武装)を纏って地獄へ』でお会いしましょう!」
恋
「れん、初めておしゃれするんだよ〜⭐︎いっぱい可愛いって言ってね?」
ひより
「……そして次回から、ギルドの男性職員たちが少しずつ大変なことになります。」
恋
「?」
ひより
「恋ちゃんは知らなくていいです。」
恋
「えへへ〜?」
(控室に、小さく優しい笑い声が響く)




