第96話
クスクスとロキフェルドが笑っている。
「ロキ……」
呆れたようにトトトゥーナは言葉をこぼす。
ロキフェルドはトトトゥーナに目を向けた。
「やあ。トゥーナ」
「ロキ! また人を唆して!」
「彼。あの彼に対して逆恨みにしていてね。厳罰されてあの彼に襲撃しようと考えるんだよ」
トトトゥーナは言葉に詰まる。
「言えばいいだけだろう」
ムイフレスの発言にトトトゥーナはその通りだと改めて思った。
ロキフェルドはにっこり笑いながら首を傾ける。
「それだとつまらないだろう?」
「ロキフェルド様。お休みの時間です」
「もう?」
拘束され連行されたはずの新人が飛び出してきた。
目は血走り、笑っているロキフェルドに向けて血に染まった短剣を突き刺した。
ロキフェルドは新人に目をやる。寸前で新人の体が硬直する。
警備兵が慌てて飛び出してくる。
新人を拘束されていく中で、エリュシアは悲痛な顔で叫ぶ。
「誰の血でありますか!? 誰の! ベルちゃん!!」
「アタシは大丈夫よ」
腕から血を流すキリーベルが出てきた。
エリュシアは悲痛な顔で叫ぶ。
「ベルちゃん!!」
腕を押さえるキリーベルは笑う。
「アタシよりエリュシアは大丈夫だったの?」
「エリュは大丈夫であります」
「それならよかったわ」
トトトゥーナがムイフレスの腕を引っ張りながら二人に歩み寄る。
「ムイ。治して」
「見せてみろ」
「回復の魔方陣が使えるでありますか?」
「下級クラスの魔方陣だがな」
ムイフレスはキリーベルの腕に手をかざし、魔方陣を構築していくと、傷口がゆっくりと塞がっていく。
「ありがとうございます」
ムイフレスは鼻を鳴らす。トトトゥーナに治してと言われなかったら治していなかっただろう。
恐る恐る警備兵がキリーベルにやってくる。
脂汗で顔が濡れている。
「すぐに医療班をお呼びします」
「結構よ。それよりもプロボーズにけちがついてしまったじゃない」
「申し訳ありません」
「今紹介するけど」
キリーベルは目をエリュシアに向けた。
「彼女アタシの婚約者のエリュシア・ユーファレッシーノよ。次期辺境伯夫人になるんだからね」
警備兵はエリュシアに敬礼する。
「あらあなた」
ふとキリーベルは警備兵をまじまじと見た。
「毎年騎士団の入団テストを受けている、ヤーファ・ソーニじゃないかしら?」
「自分を知っておられるのですか?」
信じられないという顔でキリーベルを見る。
キリーベルはええ、と答えるのだった。




