第95話
「ベルちゃん。どうして警備兵に連行されたのでありますか?」
不思議そうに首をひねるエリュシアに、キリーベルは手錠をモチーフにしている腕輪を懐から取り出した。
「竜化するから魔道具を用意すると聞いてね。ちゃんと魔道具を用意したのよ」
トトトゥーナは自身の腕輪を見る。
「これも魔道具なの?」
「ああ。竜人族は竜になるからな。大きさが変わる魔道具だが、トゥの場合はトゥに害を感じたら跳ね返す魔方陣を刻んでいる」
「ベルちゃん!」
手錠をモチーフにしている腕輪を嵌めたエリュシアがキリーベルの首に手を回してキスをした。
トトトゥーナの隣にシグレが現れた。
「ロキフェルド様が新人を唆しました。気をつけて下さい」
そう言った瞬間、怒りを含んだ、、鋭い目つきの新人がエリュシアとにこにこしているキリーベルを見た。
その耳元にはロキフェルドが何かを囁いていた。
「うああああ──!!」
腰に下げている剣を引き抜き、新人がキリーベルたちに襲いかかってきた。
エリュシアは驚き、キリーベルは剣を振り下ろすのを紙一重で避けると、新人の首に回し蹴りを食らわした。
吹き飛ぶ新人は倒れ、騒ぎを聞きつけて警備兵がやってくる。
「何があった!?」
「あの人がベルちゃんを襲ったのであります!」
新人に指を指し、警備兵は新人を見る。
エリュシアはキリーベルが怪我をしていないか上から下を見る。
「ベルちゃんがそんなに動けるなんて知らなかったでありますよ」
「うふふ。これでも辺境伯の嫡男だからね」
「そうでありました! エリュは認めてもらえるでしょうか?」
「心配事しなくて大丈夫よ。父上はあなたのことを把握していて、こっそりと竜人族について調べているから。それに認めてもらえなかったらアタシ家を出るから。心配しないで。アタシ個人の商会を持っているからあなたを養えるから」
警備兵はそんな二人に気を取られ、新人が剣を掴んだのを見逃した。
「うああああ──!!」
剣を振り回した新人に警備兵は気がつき、ムイフレスが背後からスコップで頭を叩いた。
気絶する新人は倒れ、警備兵は素早く拘束した。
「注意不足だ」
「申し訳ありません」
わらわらと警備兵がやってくる。
「あの。事情聴取を」
ムイフレスたちに警備兵が怖ず怖ずと聞いてきた。
「アタシが行くわ。彼、アタシに対して逆恨みしてきたみたいだから」
「ベルちゃん」
「ごめんなさいねエリュシア。こんなけちがついたプロボーズで」
エリュシアは首を振る。
「ここで待っているであります」
「あらそお? 心配しないで、ただの事情聴取だから。今度はすぐに終わるはずよ」
警備兵は拘束した新人を運んでいく中で、顔が真っ青だった。
エリュシアはそれでも心配そうにキリーベルに抱きつくのだった。




