第92話
治療院に向かうと、隊員はカーテンがしてあっても迷うことはなくカーテンを開けてベッドにいる子供たちに顔を見せにいく。
ギットレイドも同様に迷うことはなくカーテンを開けた。
ベッドに座っているのは、白髪の少女だった。
灰色の瞳がトーマと似ている。
トトトゥーナは気がついて、ムイフレスに視線を向けると気にする様子もなかった。
ギットレイドは少女の前に膝をついた。
「私はギットレイド・ユーファレッシーノだ。君の名前を聞かせてもらえるだろうか?」
「あたしは、ニヴェス・エヴァーホワイト」
「トーマの妹さんなの?」
ニヴェスは目を見開いた。
「兄様のこと知ってる!? 言え! 兄様のことを言え!」
トトトゥーナに手を伸ばす。
ムイフレスはエヴェスの手を振り払い、睨みつけると、エヴェスを守るようにギットレイドが抱き寄せムイフレスを睨み返す。
ギットレイドの胸元をエヴェスは叩く。
「おっとすまない」
離れるギットレイドにエヴェスは目線を下げる。
「あ、あ、あたし、ごめんなさい」
「ムイがごめんなの。ボクはトトトゥーナ。ムイはボクの番のムイフレス・ベルベルト。兄様ってことはトーマの妹さんなの?」
「トーマ。それが兄様の名前」
「お前は有翼人か? 有翼人のトーマなら、邪神教の信者になっていたぞ」
気にかけることもなく、ムイフレスは言う。
トトトゥーナは眉を下げる。言いづらいことをムイフレスは平然と言う。
ギットレイドは目を丸くし、ニヴェスはそうだ、と同意する。
「あたしたちがいた里が、人族に襲撃された。あたしたちの一族有翼人の羽は魔力が溜められる。魔力タンクになる。そして死ぬと、瞳が虹色になる。とても美しい。目玉愛好家にとても人気だ」
グスンと泣くニヴェスに、ギットレイドは無理しなくていいと言う。ニヴェスは涙を拭う。
「兄様の結婚式だった。義姉様になるはずだだった恋人は殺された。何とか撃退した。兄様義姉様を火葬して里から出ていった。あたし兄様を追いかけて里から出た。そしたら人族に捕まった」
ギットレイドはエヴェスの流れる涙を拭う。
「私が番だと分かるかい?」
ニヴェスはコクンと頷く。
「邪神教の伝道師が里にきたことがある。仲間も、仲良かった隣人だった有角人も、里から出ていったと、兄様が言っていた。でも、邪神教は誰も救わないと、戻ってきた有角人の人が言っていた。その人は、気がついたら里からいなくなっていた。お姉さんを亡くしていて、とても、傷ついていた。優しい隣人だった。亡くなったお姉さんも。あたしの兄様が邪神教の信者。それでもあたしは、あなたの番で、いいのか?」
「関係ないよ。例えニヴェスが邪神教の信者だろうと」
ニヴェスの髪の毛が羽と変わる。それを一枚引き抜くとギットレイドに差し出した。
「有翼人は恋人ができると、お互いの羽を交換して髪飾りにする。その際に魔力を溜めるのを忘れない。結婚式にまたお互いの羽を交換する。一枚の羽は恋人がいる。二枚は既婚者。それで相手がいるかどうか見る。兄様も羽が二枚になるはずだった」
ギットレイドは大事そうに羽を受け取る。
「相手が有翼人じゃない場合はどうしたらいいんだい?」
「知らない」
「そうか」
ギットレイドは困った顔でムイフレスを見た。
「ムイは贈ったかい?」
ムイフレスは首を振る。
「トゥは竜人族じゃない」
「だよねぇ」
トトトゥーナは首をひねる。
「竜人族は何を贈るの?」
ムイフレスは言い淀む。
そこにエルアーノがやってきた。
「ユーファレッシーノは大丈夫だと思うが、番に対して恐怖を与えていないな?」
「エルアーノ。いい所にきたの」
「どうした?」
「竜人族は番に何を贈るのの?」
「ん? ああ。竜人族は相手の種族に合わせて贈るぞ」
「竜人族同士なら何を贈るの?」
エルアーノは言い淀む。
「竜人族は何を贈るの?」
トトトゥーナは首をひねる。エルアーノはムイフレスやギットレイドに目をやる。
「手錠をモチーフにした腕輪だ」
ムイフレスの発言に、トトトゥーナは驚くのだった。




