第88話
孤児院に向かうと、荒らされていた。
子供たちは泣き喚き、カーターとコゼットがそんな子供たちを宥めていた。
アクセルはそんな中アネモネにミルクを飲ましていた。
ひっくり返った椅子を元に戻していたエルアーノとステラは、気にせず入ってくるムイフレスと抱き抱えられているトトトゥーナに気がついた。
「どうしたの? 誰か暴れたの?」
「私たちがきたときにはこうなっていてな。私もまだ詳しいことは分からないんだ」
子供たちが泣き喚き、カーターとコゼットは宥めるので必死だ。
「お菓子があるの。皆で食べるの」
子供たちは泣き止んだ。素直である。
アップルパイを食べる子供たちを見ながら、トトトゥーナはカーターたちに顔を向ける。
「どうしたの? 反抗期なの?」
カーターはクスリと笑った。
コゼットもクスリと笑い、カーターは説明会した。
「貴族がきましてね。妾用の女の子を引き取りたいと言われまして。断ったらこの有様です」
カーターの説明にトトトゥーナは眉を寄せる。
「何なの? 変態なの?」
コゼットは深い溜息をついた。
「たまにいるのさね。前は妾奉公を募集していると言われたのさね」
「何なの?」
カーターは苦笑う。
「まあ、経済的な援助をする代わりに、愛人として仕える雇用形態ですね」
「なる子いるの?」
カーターは困った顔をする。
「いましたよ。本人がなると言うので、送り出しました。」
「十二年前さね」
「今も愛人なの?」
「それが契約を切られましてね。子供と一緒に戻ってきたんですが、男を作って子供を置いて出ていってしまったんです」
「その子供はどうなったの?」
カーターはアップルパイを食べるマシューに目線を向ける。
トトトゥーナは驚く。
「マシューがその子供なの?」
カーターはええ、と頷く。
「あの子の才能を大々的に言わないのは、あの子の母親がそのことを知り、金目当てに引き取ろうとするのを危惧しているからなんです」
「子供は母親といたいさね。マシューが母親と一緒にいたいと言っているのに、我々が拒むと、裁判で負けるさね」
「マシューの父親は? 貴族? ならマシューも貴族なの? 父親もマシューの才能を知れば引き取ろうと思うの」
「正妻が生んだ子供しか貴族にはなれません。それにマシューが拒絶すれば父親だろうと引き取れません。あの子は知っています。父親が母親を妾奉公で雇用し、そして契約を切ったことを」
美味しそうにアップルパイを食べるマシューをカーターな悲しそうな顔で見つめる。
「実は貴族の血を引いているのはマシューだけではないんです」
驚くトトトゥーナにカーターは続ける。
「お手付きになった使用人が多いですね」
「正妻に仕事を辞めさせられた女性の子供が多いさね。紹介状がなければ、次の仕事が見つかりにくいさね」
トトトゥーナは改めて子供たちを見る。
「マシューのように、親のことを知っている子もいますが、知らない子もいるんです。その子は父親が引き取りにくると喜んで行ってしまうんです。これから待ち受ける苦難を理解できないまま。確かに正妻が生んだ子供しか貴族にはなれませんが、貴族の血は流れているので、政略結婚はできるんです。その駒として使われるのです。愛のある結婚生活が送れることができればいいのですが、中にはそうでもない暮らしが待っていることもあるんです」
「そのことを教えているの?」
「ええもちろん。ですがそれでも行ってしまう子が多いですね。我々はその子たちの幸せを祈ることしかできません」
カーターは悲しそうな目で子供たちを見る。
そんなカーターをコゼットは悲しそうな顔で見ていた。




