第83話
応接室で職員が紅茶を出して下がっていく。
エドモントは紅茶を飲む。
「それで森の様子はどうでしたか?」
ムイフレスは当然かのように膝にトトトゥーナを乗せていた。トトトゥーナが自分で紅茶に息を吹きかけてから飲んでいることに、ムイフレスはどこか寂しげな顔をしている。
「邪神教が生贄から目を逸らすために召喚したと思われる。またそれによって森のバランスが崩れるようなことは今時点確認されていない」
エドモントは目を丸くしてソーサーにカップを叩きつけた。
「この地に邪神教が潜んでいるだって!?」」
「まあ何処にもいるな」
「まあそうなんですが、まさか辺境の地にもいるだなんて……」
それで、とエドモントは続きを促す。
「邪神教の信者を拘束したが、深い洗脳がされているため、生贄による殺人罪が適用されなかった」
「馬鹿なっ!」
「生贄は邪神教に限った話ではない。排他的の村に傾向があるが、今でも生贄が行われている。それに多くの者がキュアトリー教であり、キュアトリー様は全ての者を肯定し愛している。邪神教もその中に入っていることから、どの国も邪神教を排除できないのだ」
エドモントは深く息を吐く。
「殺人犯が死刑になりにくいのは、殺人犯ですらキュアトリー様の愛の下にあるからです。邪神教の多くは被害者の集まりでした。最初の頃は、ですが。いつからか人を洗脳し、生贄を行う過激派になってしまった」
エドモントは深い溜息をついた。
「それで? 生贄にされた者は助かったのですか?」
「二人が生贄にされていたが、一人は助けれなかった」
「そうですか……」
エドモントは悲痛な顔で紅茶を飲む。
「報告は以上だ」
ムイフレスはトトトゥーナが飲み終えたカップを受け取り、ソーサーに置こうとしてふと手が止まった。
カップの匂いを嗅ぐムイフレスにトトトゥーナとエドモントは眉を寄せる。
「ムイ? どうしたの?」
ムイフレスはトトトゥーナに向けて魔方陣を構築する。
「ムイ?」
「紅茶以外の匂いがした。一応解毒の魔方陣を構築した」
トトトゥーナとエドモントは驚き、ムイフレスの瞳に魔方陣が浮かび上がり、トトトゥーナが飲み終えたカップを見る。
「エッサ草の毒が入れられているな」
エドモントは職員を呼ぶ。呼ばれた職員か部屋に入ってくる。
「どうしましたか?」
「紅茶を入れた者と運んできた者を呼んできなさい!」
「は、はいっ!」
職員は慌てて部屋から飛び出していく。
「ムイ。ボク」
眉を下げるトトトゥーナにムイフレスは安心させるように額にキスをする。
「エッサ草の毒が即効性じゃなくてよかった。混入させた奴を殺してやる」
落ち着いているように見えるムイフレスだが、そうでもなかった。




