第82話
「どうして分かったんだ!!」
痺れを切らしてラルスが叫ぶ。
ムイフレスはラルスに顔を向けた。
「若干口の動きと声が合っていなかった」
警備兵がラルスに声をかける。
「詰所まできてもらおうか」
ラルスはガックリと肩を落として警備兵に連行されていく。
容疑が外れたことにイルは深く息を吐いた。
カリンは恐る恐るアークに近づいた。
「あの。すみませんでした」
「いや……気にしないでくれたまえ」
犯人に疑われたよりも、手鏡が割れたことに対して絶望している。
エドモントが何処からか手鏡を持ってくると、アークは飛びついた。
手鏡で髪を整えるアークにエドモントとカリンは顔を引きずる。
「ムイ凄いの! ボク全然分からなかったの」
エルアーノも同意する。
「最初からリタを疑ってなければ分からなかっただろう。よく分かったな?」
「実はここにくる前に、その娘を見かけたんだ」
「そういう理由か」
「よくここが分かったの」
「何処にいても分かるさ」
ムイフレスはトトトゥーナの額にキスをした。
エドモントが歩み寄ってくる。
「そういえば何かご用があったんですか?」
「カリンたちかま商人ギルドの職員に体を売れと被害があってな。エドモントに放り投げ、おっと。相談しようと思ったんだ。まあ、解決したがな」
エドモントはそうですか、と悲痛な顔になる。
「まさか副ギルマスがこんなことをするなんて。すぐに被害者を調べなくては」
エドモントはカリンに頭を下げた。
「副ギルマスが申し訳ないことをしました。申し訳ありませんでした」
頭を下げるエドモントに職員たちも頭を下げた。カリンはあたふたする。
頭を上げたエドモントの美しい顔にカリンはぼうっとするが、首をひねられたことにハッとする。
「販売許可証を下されば、とりあえず四枚下さい」
エドモントは眉を下げる。
「規則として本人にしか渡せないことになっているんですよ」
「ならとりあえず私だけで。三人は後日越させますので、その際お願いします」
「そうしてもらえると助かります」
エドモントはムイフレスに顔を向けた。
「森の様子はどうですか?」
ムイフレスはそうだったな、と思い出す。
「二階でお話を聞きましょう」
カリンはトトトゥーナに頭を下げる。
「ありがとうございました」
「なら私たちは先に帰っている。孤児院は見ておくから心配するな」
エルアーノがそうトトトゥーナに声をかける。ムイフレスが離そうとしないからだ。
ステラはエドモントに声をかけた。
「あの。ギルドマスターさん」
「な、な、何でしょう?」
ステラに許嫁宣言されて、少し気まずく吃ってしまった。
ステラはもじもじとしながらエドモントを見上げた。
「一週間後に〈赤い屋根のパン屋〉さんで、美味しいパンの試食があるんです。ギルドマスターさんもきませんか?」
「え? えーっと」
もじもじと見上げるステラにエドモントは気づいたら頷いていた。
ステラはホッとして笑った。
「お待ちしてますね」
エドモントはその笑みにステラの母親が重なったのを見る。母親に似ているのだ。笑みも似ていて当たり前だった。
(メリーシャ。君を追いかけて追いかけて、そして君は泣いた。私じゃ嫌だと。結婚するなら死ぬと。だから私は諦めた。そして気づいたら商人ギルドのギルドマスターになっていた。そしたら君の娘がきた。これは運命だろうか。最初からこうなるのが運命だったのだろうか)
「ギルドマスターさん?」
首をひねるステラにエドモントはどこか悲しげさは一瞬で、にこりと笑うのだった。




