第77話
「ここです」
エルドファーネが案内した服屋の前に、エルアーノが危惧した仲間たちの所に連れていかれて、金目のものを奪われるようなことはなかった。
トトトゥーナたちはお礼を言うが、アクセルだけはぼんやりしていてお礼は言わなかった。
特にエルドファーネはアクセルに対して何か言うことはなかった。
服屋の名前は〈ヴェネッタ〉
エルドファーネと別れてトトトゥーナたちは店に入ると、キリーベルが美しい店員とドレスについて話し合っていた。
美しい店員はトトトゥーナたちに気がつくと、声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用でしょうか?」
どことなく、ギットレイドに似ている。
「私はあなたのお兄さんの部下なのだが、一週間後に美味しいパンの試食があるのだが、よければ参加しないか?」
美しい店員が目を白黒させていると、キリーベルが話に乗ってきた。相変わらず女装をしている。
「あらいいじゃない。アタシも美味しいパンを食べたいわ。エリュシアも食べればいいじゃない」
「エリュはにーにーから何も聞いてありませんが。まずは名前を聞きたいであります」
「おっと失礼した。私はエルアーノ・エルロランに、番のアクセル・フィールドにその妹のステラ。今はいないが竜人族の番のトトトゥーナだ」
「エリュはエリュシアであります。よろしくお願いするでありますよ」
「一応アタシも自己紹介するわね。アタシはキリーベル・ヴォンリックよ。よろしくねぇ」
エルアーノは眉を寄せる。
「ヴォンリック辺境伯家の者か?」
「そうよ」
「娘は一人だけのはずだが? 分家の者か? だがしかし娘はいなかったはずだ」
「ウフフ。アタシ可愛い物が好きな一応嫡男よ」
エルアーノとステラは驚く。キリーベルはウフフと笑う。
「娘は我が儘。嫡男は女装癖。まともな子供がいないヴォンリックよ」
「驚いたが、まあ人に迷惑をかけていないのなら、いいんじゃないか?」
キリーベルは目を丸くして、笑う。
「ありがとうね」
アネモネが泣き出した。アクセルは宥めるが泣き止まない。
奥の部屋から美しい女性が出てきた。
長い耳に褐色の肌をしている。
美しい女性はアクセルを見るなり美しい顔を歪めた。
「今さら何しにきた!?」
ぼんやりしているアクセルに、美しい女性は眉を寄せた。
「ユージーンじゃない?」
ステラがアクセルの前に立った。その間アネモネは泣き続いている。




