第76話
「うむ。いい心掛けだな。騎士団は、冒険者もそうだが、犯罪者は入団後させないからな」
「まあ、冒険者でもいいんですけど、騎士団は死んだら遺族年金が出ると知ったんで、出ない冒険者よりは騎士団の方がいいかなって」
「出るが、一般兵は十年で隊長クラスは二十年だな」
「十四歳か十五歳で従騎士になれると知ったんですけど、誰でもなれますか?」
「従騎士になれるのは小姓からの奴だ。お前が騎士になれるのは十六歳から行っているテストに合格すれば見習いとして入団できる」
「そうですか」
肩を落とす少年は、まあ、しょうがないと切り替えが早い。
「何歳まで挑戦できるんですか?」
「長命種がいるから上限はないな」
「やっぱり長命種が多いですか?」
「まあ、それなりにいるが、人族ももちろんいるぞ」
エルアーノは懐の財布を取り出し、紙幣を少年の手に握らせた。
「取っておきなさい」
少年は目を丸くして、紙幣とエルアーノを見比べる。
「あり、がとう、ございます」
「名前を聞いておこう。私はエルアーノ・エルロラン。番のアクセル・フィールドに、その妹のステラ。そしてトトトゥーナだが、番が竜人だから番殿の名前は呼ぶなよ」
「殺されても文句は言えませんよね。分かってますよ。俺はエルドファーネ・リンドンです。これから案内します。因みに俺はモグリじゃありませんので、安心して下さい」
エルドファーネは紙幣を首から下げている子袋に入れて、大事そうに服の中にしまった。
「ムイは、ボクの名前を呼んでも殺さないと思うの」
「ベルベルトは堪えている方だぞ? 特に竜人族の雄は番に対して愛が重たい傾向があるからな。そのため竜人族以外の番は竜人族から逃げる傾向がある」
「エルアーノは?」
「私か? 私はアクセルがアネモネを背負っていても大丈夫だが、それはベルベルトならば番殿が背負っているのは気に障るだろうな。それでも願ったら許すだろうが、胸の内は穏やかではないだろう」
「どうしてそう違いが出るんですか?」
首を傾けるステラにエルアーノはそれは、と説明する。
「恐らく雌は母親になるからだと言われている。竜人族に子供が少ないのは、エルフと違って性が淡白なのではなく、雄が子供を作りたがらないことが一番の理由だと言われている」
性と聞いてステラは顔を赤らめる。
トトトゥーナは首を傾ける。
「どうしてエルフは性が淡白なの?」
「そこまでは調べた者はいかいが、ダークエルフはエルフと同じぐらいの長命種だが、性が淡白ではないことが分かっている。実際にアクセルたちは兄弟だしな。エルフは一人っ子が多い傾向があるようだが、何せ排他的だからな。調べたくてもそう簡単には里には入れないからな。調べるとしたら里から出てきたエルフに限るが、数が少なくて十分なデータが取れないだろう」
「ダークエルフは排他的じゃないの?」
「エルフよりは排他的じゃないはずだ。アクセルたちの父親に許嫁がいなければ、ダークエルフの里で受け入れられただろう」
ステラは目線を落とす。
「ス、テラ」
アクセルが名前を呼ぶ。
ステラはどこか悲しげに笑うのだった。




