第75話
「モリスさん!」
トトトゥーナが声をかけると、モリスは振り返った。
トトトゥーナたちにモリスは驚く。
「どう、なさいましたか?」
「ボク。ボクね」
えーっと、とトトトゥーナはどう伝えようか迷う。
「ルーベン・エミリートさんがね──」
「ルー坊のことか!?」
目を見開くモリスに、トトトゥーナは頷く。
「風の噂で、遠い地で成功しているって」
トトトゥーナは迷った。邪神教の信者たちの工作によって、ルーベンは金目のものを持って蒸発したとモリスは思っている。
本当のことを言った方がいいか、と思ったとき、モリスは涙ぐみながらホッとした。
「あいつ……そうか。ならいい」
「いいの?」
成功したと聞いて怒り狂うか悔しがるか、トトトゥーナが思っていた反応と違っていた。
モリスはええ、と涙を拭う。
「くたばり損なってなければ、いいんですよ」
トトトゥーナはますます本当のことを言おうか、迷ったが、本当のことを言うのが全てではないと思い直した。
だがこれで、ルーベンの墓は作られないだろう。
立ち去るモリスの背中を見て、トトトゥーナはエルアーノを見た。
「これでよかったと思う? ボクには分からないの」
「私も分からないさ。ただあの青年の願いだからな。願いを叶えたと思えばいいさ」
「そう……思うの」
「次は妹さんを試食日に誘うんですよね? そういえばお名前は何て言うんですか?」
「妹君の名前は、エリュシアと言う。元々は王都に住んでいたらしいが、番問題が色々あっただろう? それで兄であるユーファレッシーノがいる辺境にきたらしい」
「針子でしたよね? お店は知っていますか?」
ステラの質問にエルアーノは腕を組んで考え込む。
「それが聞いたんだが、思い出せん。別に妹君と友達という訳ではないからな」
「でも竜人が針子なんて珍しい気がします」
「そうだな。だがまあ、私のように竜人なのに攻撃の魔方陣が扱えないように、手先が器用な竜人もいるさ」
ステラは目線を落とす。
「すみません。浅はかでした」
「それなら俺、知ってますよ」
声をかけてきた少年にトトトゥーナたちは顔を向けた。
小綺麗ではあるが、すぎはぎだらけである。
「五百ルンで案内しますよ」
「そう言って仲間たちの所に連れていって、金目のものを奪う魂胆か?」
鼻を鳴らすエルアーノに、少年はどこか冷めている。
「違います。確かにそういう集団はあるようですけど、俺大人になったら騎士団に入りたいんで、まともに生きてます」




