第74話
〈赤い屋根のパン屋〉から出ると、プリンを持ったグレンアーグがエルアーノに抱きついた。
「俺は行くけど、何かあったらいつでもアリサに頼んで笛で呼ぶか、森においで」
「美味しいパンは食べるか?」
「リディ次第だね」
エルアーノはグレンアーグを抱き締め返した。
「お前の夜の番殿にありがとうと伝えてくれ」
グレンアーグの足元に魔方陣が構築していき、エルアーノはグレンアーグから離れた。
グレンアーグはああ、と頷き、消えていった。
エルアーノはグスンと泣き、アクセルが手を伸ばして涙を拭った。
「アクセル」
「エル」
エルアーノはにこりと笑い、心配そうな顔をしているトトトゥーナとステラの頭を撫でる。
「モリス・ランリー」
アクセルの瞳に魔方陣が浮かんでいる。エルアーノはそのことに気がつき、アクセルは指を指す。
トトトゥーナたちはその方向に顔を向けると、モリスが歩いていた。
「どうして分かったの?」
不思議がるトトトゥーナにエルアーノはそれは、と答える。
「鑑定の魔方陣のおかげだ。まあ人に向ける際許可を取らなければならないと、殴られても文句は言えないがな」
「誰でも使えるの?」
「一応私は使えるが、あまり鑑定の魔方陣を覚えないだろうな」
「それはどうしてですか?」
「多少なり魔力がある者は騎士なり冒険者なりなることが多いからな。そしたら攻撃の魔方陣を覚える傾向があるからだ。まあ覚えたとしても、自分が持つ魔力と合わなければ魔方陣は構築しないんだがな」
いい例が私だ、とエルアーノは続ける。
「私の魔力は攻撃の魔方陣と合わなくてな。合うのが回復の魔方陣系だ。その中で覚えた鑑定の魔方陣が使える訳だが、確かベルベルトもユーファレッシーノもグレンアーグも使えたはずだからな。そういう魔方陣は万能型と呼ばれるんだ」
エルアーノは行くぞ、とアクセルの腕を引っ張りながらモリスに駆けていく。
トトトゥーナとステラは慌てて後を追うのだった。




