第65話
「プンクリンを食べてみたいのよね」
「それだけか?」
「あら。私は怖い妖精じゃないのよ」
「トゥの負担にならないだろうな?」
「ムイ。ボクは大丈夫なの」
トトトゥーナはリデルエリエーゼの手をそっと掴んだ。
リデルエリエーゼは目を閉じる。
「あーはいはい分かったわ」
トトトゥーナの手を離したリデルエリエーゼは、何もない所から手鏡を取り出した。
「聞こえる? 私のお人形さん」
手鏡にグレンアーグが映った。
「どうしたんだーい? リディ」
「手鏡に映す場所に行ってもらいたいのよ。そこがもう一つの生贄になっている場所みたいなのよ」
「今飛ぶーね。よし。飛んだーよ」
「転移魔方陣を手鏡を通して送ってくれるかしら?」
「手鏡を通してこられないのか?」
「心配しないで。私以外にいるだけだから」
「リディ以外?」
誰がいるんだ、とまでは言わなかった。
手鏡から魔方陣が浮かび上がる。
「飛ぶ人は私に掴まってちょうだい」
トトトゥーナはムイフレスを見る。
「ムイ」
掴んで、と含む。
ムイフレスは嫌そうにリデルエリエーゼの袖を掴んだ。
エルアーノはアクセルに待っていてほしそうだったが、裾を掴んで離れそうにないので、諦めてリデルエリエーゼの手を掴んだ。
ステラは慌ててリデルエリエーゼの腕を掴む。
リデルエリエーゼはトトトゥーナたちを見回して、アリサを見る。手を振るアリサに振り返して、浮かび上がる魔方陣に触れた。
景色が一瞬で森の中に映り、グレンアーグが出迎えた。
「誰かと思ったーら、隊長サマたちだったんだーね」
そこで赤ん坊を背負っているアクセルを目にして、首をひねり、裾を掴まれているエルアーノを見る。
「どーいうことだーい? 別人、じゃなーいね?」
「記憶喪失なんだ」
「なーるほーど?」
「それで? 私のお人形さん。もう一つの生贄になっている場所は何処かしら? 私早くプンクリンを食べたいのよね」
グレンアーグは崖下に指を指す。
「あそこだーよ」
崖下に洞窟が見えた。
木に掴まって崖下に体を傾けるグレンアーグは、ムイフレスを見た。
「どうすーるの?」
アクセルが崖下を滑り降りていくのをエルアーノとステラが慌てて滑り降りていく。
溜息をついたムイフレスは、しっかりトトトゥーナを抱きしめて滑り降りていき、残ったリデルエリエーゼはグレンアーグに首をひねった。
「あなたはどうするの?」
「リディは?」
「私も行くわよ」
面倒臭いけど、と付け加えて。
グレンアーグはリディが行くなら、と答えるのだった。




