第59話
商人ギルドから出たムイフレスたちは、どうしようかと話し合った。
「時間がかかっちゃったの。だから二手に分かれるの。私とムイとマシューは職人の所に。エルアーノとアクセルとステラは街の恋人たちにメレンゲクッキーを試食させて宣伝するの。それから露店の場所も見てきてほしいの」
「商人ギルドが一年も買ってくれるんだ。十分じゃないか?」
マシューの意見にエルアーノがどうだろうと答える。
「私は一つしかない売り上げは避けるべきだと考える。交渉力の低下や契約を打ち切られることが考えられるからだ」
「そうか。でも何かあったときお金を出してくれるんだろ?」
「勘違いするな。アクセルがいるから金を出すんだ。アクセルがいなければ金など出さんわ。だから今のうちに自立するんだろうが」
マシューは甘い考えをしていたことに気づかされる。
「広場で待ち合わせするの」
エルアーノたちと別れて、トトトゥーナたちは職人が集結する地区に向かう。
「鍛冶職人は外した方が無難だろう」
「ムイ。どうしてなの?」
「酒を好むドワーフだからな。宝石工房のドルン工房へ行こう。そこの親方と知り合いでな。ドワーフと人族のハーフだが、あまいものに目がなかったはずだ」
「そこなら名前だけなら知ってるぜ! 孤児院を卒業した奴が弟子入りしたんだ」
「ならマシューに交渉任せるの」
「オレが? 分かった。やってみるぜ」
ドルン工房は大きく、交渉を任せられたマシューは怖じ気づいた。
「オレ。無理だ」
「すみませーん!」
トトトゥーナが声を上げるとマシューは慌てる。
「お、おいっ!」
箒を持った青年が工房から出てきた。
「どうしましたか? あ。おっと」
青年はマシューに気がついた顔をしたが、無駄口をきく前に口を閉ざした。
「ご用件は?」
そして改めて口を開いた。
「孤児院の卒業生なの?」
少しぐらいお喋りしてもいいと思ったトトトゥーナが話題を広げた。青年は困った顔をしたが、ええ、と答えた。
「久しぶりだな。元気だったか?」
マシューが声をかけると、青年は眉を下げた。
「ああ。お前も弟子入りか?」
「まさか。売り込みだよ売り込み」
そこでマシューはトトトゥーナに青年を紹介した。
「こいつ。リク・ルッツっていうんだ。二年前に孤児院を卒業したんだ」
「トトトゥーナなの」
リクはトトトゥーナを抱き抱えているムイフレスに睨まれて、顔を引きずる。
「何を売り込むつもりなんだ?」
「お菓子だよ」
マシューはメレンゲクッキーの試食品をリクの口に押しやった。リクはそれを口に入れて目を丸くする。
「買ってくれると思うか?」
「案内するよ。でも今商人がきているんだ。ちょうど休憩する時間に食べるお菓子を探している所なんだよ」
「えっ?」
「売り込み頑張りなよ」
マシューは顔を引きずった。




