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第55話

「オーブンを百度に予熱するの。ボウルは白身だけ入れて、泡立てるの。砂糖を三回に分けて加えて、しっかり泡立てるの。そしたらレモン汁を加えるの。ボウルを逆さまにしても落ちてこないほどの硬さを目指すのこれがメレンゲなの。そしたらボクたちが買ってきたバターで薄くムラなく鉄板に塗り込むの。そしたら小麦粉をふりかけるの。余分な粉は落としてからスプーンでメレンゲを鉄板に落としていくの。それで崩れを防ぐの。そしたらオーブンで約六十分から九十分乾燥するまで焼くの」

トトトゥーナは一通りの説明をする。

エルアーノは頷き、子供たちに向き直る。

「いいかお前たち。私も手伝うが、主導はお前たちだ。分かったな?」

子供たちは神妙に頷く。

「あたしも手伝うさね」

コゼットが子供たちを安心させるように言うと、子供たちはどこかホッとした。

「エル。エル」

アクセルがエルアーノの裾を掴んで引っ張る。エルアーノは首をひねった。

「アクセルも作りたいのか?」

「うん。うん。僕もエルに作りたい」

エルアーノは照れる。

「そ、そうか。アクセルも作ってくれるか」

「エルにあげる。あげる」

「そ、そうか。ありがとう、アクセル」

アクセルは手際よく卵を割り黄身と白身を分けていき、白身を泡立てる。

エルアーノが感心していると、ステラが説明した。

「邪神教に入団する前は、両親の代わりに料理やお菓子をよく作ってくれたんです」

「そうなのか」

「わたしがいなければ、兄さん逃げ出せたのに。わたしがいて、逃げ出せなかったんです」

エルアーノはステラの頭を撫でる。

「自分を責めるな。結果は邪神教に洗脳を受けたが、その前までは守ってもらったんだろ? その行為を否定するな」

ステラは涙ぐむ。

「すごーい!」

アクセルがボウルを逆さまにしてもメレンゲが落ちてこないことに子供たちがはしゃぐ。

コゼットが鉄板にバターを薄く塗り込んで小麦粉をふりかけていき、余分な小麦粉を落としていく。

「ほらほら遊んでないでスプーンでメレンゲを落としていくさね」

子供たちはスプーンを手に取り、メレンゲをすくって鉄板に落としていく。

コゼットが鉄板をオーブンに入れる。

「これで後は待つさね」

子供たちはわくわくしながらオーブンの前で待つ。

そして時間が経ち、コゼットがオーブンから鉄板を取り出す。

トトトゥーナが慌てて言う。

「鉄板が冷たくなるまで放置するの。そしたら自然にメレンゲが鉄板から浮き上がるの」

子供たちは残念がる。

「早く食べたいよ」

「飽きた。遊びたい」

「遊ぼうよぉ」

不満を言う子供たちにマシューが叱った。

「お前たち! オレたちのために先生が考えてくれたんだぞ! ちゃんとやれよ!」

子供たちはマシューに叱られたことで、不満を言うのをやめた。

「カーター院長がオレたちのために大事な角を売ってるんだそ。オレたちのために、オレたちが何もしなくていいのかよ」

「でも、伸びてくるって言ってたよ」

女の子が角なんて何でもないかのように言う。

マシューは首を振る。

「オレ、本を読んで知っているんだ。有角人の角は大事で、折る行為は全裸になるのと同じだって。つまり院長はオレたちのために全裸になっているんだよ。警備兵に見つかったら風紀を乱した罪で捕まっちゃうんだよ」

子供たちは捕まると聞いて騒ぐ。コゼットは初めて聞いたことに驚く。

「院長がオレたちのために全裸になっているんだぞ。オレたちが何もしない訳にはいかないだろ?」

トトトゥーナはムイフレスに聞く。

「そうなの?」

「そうだな」

ムイフレスは興味なさそうに肯定した。

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