第54話
エルアーノは驚き、ムイフレスが思わず呟く。
「瞬間記憶能力者か」
マシューは首をひねる。
「何それ?」
「お前のように瞬間に記憶する能力者のことだ」
「へえ。オレ、生まれたとき母親にオレのこといらないって言ってたの覚えているんだけど、そのせい?」
「可能性はあるな」
「女の子が欲しかったみたいなんだよね」
ムイフレスは興味がなさそうで、たたそうか、と返す。マシューは今までかわいそうと言われ続けてきたのか、興味がないムイフレスにマシュー興味を持った。
「かわいそうだと思わない訳?」
「お前の生まれに興味はない」
「皆オレの生まれがかわいそうって言うんだ」
ムイフレスはそうか、と答える。
マシューは顔色が悪くなった。
顔色が悪いことに気がついたコゼットがマシューの顔を窺う。
「どうしたさね?」
エルアーノも気がつき、ああ、と説明する。
「いきなり魔方陣を構築させたんだ。恐らく魔力酔いだろう。初めて魔方陣を構築させる子供によく起きる症状だ」
「魔力切れじゃないさね?」
「魔力切れならぶっ倒れている」
「オレなら大丈夫。先生が教えてくれるメレンゲクッキーを作るんだ」
「大丈夫だ。私治してやろう」
エルアーノがマシューに手をかざし、魔方陣を構築させる。
マシューの顔色が次第によくなっていく。
「癒しの魔方陣だ。魔力酔いにも効くからな」
「あ、ありがとう。お姉さん」
「うむ。ちゃんとお礼が言えることはいいことだ」
エルアーノかわマシューの頭を撫で回すと、アクセルがその手を掴んだ。
エルアーノは驚く。
「ア、アクセル?」
「エル」
アクセルはエルアーノの手を撫でる。
エルアーノは顔が赤くなり、照れる。
「もしかして嫉妬したのか? そうなのか? わ、私はアクセルの番だ。目移りはせん」
エルアーノは照れながらトトトゥーナを見た。
「は、始めるか」
「言うの忘れたけど、メレンゲクッキーから出る黄身を使ってクッキーを作るの」
「メレンゲクッキーの材料しか買ってないが、どうしよう」
「大丈夫なの。商人ギルドで登録した帰りにその材料を買ってきたの」
エルアーノはホッとし、調理場でメレンゲクッキーの材料や道具を亜空間から出していく。
「まずメレンゲクッキーなの。黄身と白身に分けるの」
「ああ。一体メレンゲクッキーとはどんなクッキーなんだろうか」
エルアーノは唇を舐め回した。




