第34話
「嫌よ。私はアリーにプレゼントを探さないといけないんですもの」
夜の妖精は同行を断った。
「アリーとは、〈赤い屋根のパン屋〉の所のアリサか?」
ギットレイドが質問した。
夜の妖精はええ、と答える。
「アリーは私の友達なのよ」
「聖女にするつもりはあるのか?」
夜の妖精はクスリと笑う。
「アリーは聖女ではないわ」
「妖精の祝福によって聖女になるのだろう?」
「妖精は聖女だから祝福するのであって、妖精に祝福されたから聖女になるのではないわ」
「君は聖女を知っているのかい?」
夜の妖精はクスクス笑うだけで答えない。
「さあね? でもこれだけは言えるわ。聖女なら何でも許されることはないのよ。妖精の怒りを買えば聖女としての資格が失われる。逆に言えば、妖精の怒りを買わなければ、いつまでも聖女でいられるわね」
「では、聖女でない者が妖精の祝福を受けたら、どうなるんだい?」
「さあね? 私はまだ祝福をしたことがないから、その人がどうなるのか知らないわ」
「アリサで試すのかい?」
夜の妖精は視線を落とす。
「それは、どうかしらね。私は異分子だから、どうなるか分からないわ」
視線をグレンアーグに向けた。
「私が異分子だから、本来自我がないはずのお人形に、自我が目覚めたのかしらね?」
グレンアーグはエルアーノを引き離すと、夜の妖精に歩み寄り、白い手を取りそっと唇を落とした。
夜の妖精は顔を赤らめ、視線を落とす。
「君が異分子でも、俺は気にしないよ」
「あなた、とっても破廉恥だわ」
「まだ名前を聞いてなかったね。俺はグレンアーグ。君は?」
夜の妖精はチラッとグレンアーグを見る。
「リデルエリエーゼ」
グレンアーグはムイフレスに顔を向けた。
「俺のことは死亡でも何でもいいので騎士団を抜けるから! リディと一緒にいる!」
リデルエリエーゼは目を丸くする。
「ちょっとあなたね! 何を勝手にっ」
「俺はリディのお人形だからね」
「私は異分子なのよ!? 他の妖精に何て言われるか、分からないのよ!?」
「俺は、君と一緒にいたいんだよ」
リデルエリエーゼはポロッと涙を流した。
グレンアーグは手を伸ばし、指先で涙を拭う。
リデルエリエーゼはどこか諦めて笑った。
「そんなこと、初めて言われたわ」
グレンアーグは呆然としているエルアーノに顔を向けた。
「おーれ。死んじゃったけど、泣かないでーね」
エルアーノは息を吐いた。
「泣くか馬鹿が」
グレンアーグは首に下げている刻印プレートを外した。
「隊長サマに迷惑かーけるけーど」
ムイフレスはそれを受け取る。
「気にするな」
興味なさそうに答えるのだった。




