第25話
部屋に戻ろうとするムイフレスに令嬢が声をかけた。
「番が見つかったなんて、そんなの嘘ですわよね? だってムイフレス様の番は、私なんですもの」
「何度も否定している。お前は私の番じゃなければ、番は見つかった。黙れお前は。番が嫌な気持ちにさせているのを分かれ」
「そうよ。番は見ただけで分かるんだから。何度も会ってるあなたが番のはずがないのよ」
「私はムイフレス様の運命の番ですわ。私はムイフレス様を見たときから分かっておりますの」
「ソフィア! アタシを無視するんじゃないわよ!」
ソフィアと呼ばれた令嬢はフンと顔を背ける。
キリーベルは溜息をつく。
「ムイフレスとは婚姻できないって何度言えばいいのよ。ムイフレスは番主義者なのよ。番主義者と強引に婚約又は婚姻はできないって、法律にもあるの。裁判にも負けるの。寧ろそうするものなら訴えられちゃうの。分かってるの?」
「私とムイフレス様は運命の番ですわ。そんなの関係ないのですわ」
「迷惑だ」
溜息をつくムイフレスはソフィアに手を伸ばした。魔方陣が構築されて、ソフィアは消えた。隊員は驚いてムイフレスを見た。
「隊長!」
「施設の外に出しただけだ」
「転移の魔方陣は施設では禁止されています」
「……見なかったことにしろ」
「できかねます。始末書を書いて下さい」
隊員は敬礼すると、立ち去っていく。
「一応様子を見てくるわ」
キリーベルはボンネットを被り、顎の下で紐を結ぶ。
喉仏が見えなければ令嬢にしか見えない。
「ムイフレスに抱き抱えられていた番ちゃん、ソフィアったら無視していたわね」
そういえばそうだったとトトトゥーナは思う。
キリーベルは溜息をついて、トトトゥーナに忠告する。
「いい? 常にムイフレスがいるから大丈夫だと思うけど、気を付けるのよ?」
トトトゥーナは眉を下げる。
「ボク。何かされちゃうの?」
「過激なことはしないと思うけど、あの子。何をするか分からないから」
「ボク。ボク。困るの。ボク」
ムイフレスがトトトゥーナの額にキスをする。
「心配することはない」
ちゅっちゅっとキスをするムイフレスにトトトゥーナはくすぐったそうに笑う。
二人の様子を見て、キリーベルは本当に番なんだと実感するのだった。




