第23話
騒がしくて目を覚ましたトトトゥーナは、隣にいるはずのムイフレスがいないことを見る。
声が気になり体を起こして床に足を下ろす。
立ち上がったトトトゥーナはドアへ歩み寄る。
ドアが開いていた。覗き込むと、ムイフレスが令嬢に抱きつかれていた。
トトトゥーナは思わずドアを全開にした。
振り向いたムイフレスは目を見開く。トトトゥーナの眼球が黒く染まっている。
「ボクの、ぼくのムイフレスに手を出さないでなの!!」
ムイフレスは令嬢を引き剥がすとトトトゥーナを抱きしめた。トトトゥーナの眼球は白く戻っていく。
引き剥がされた令嬢は尻餅をつく。
涙を流すトトトゥーナの額にムイフレスはキスをする。
「勘違いさせて悪かった」
尻餅をついた令嬢は腰を撫でて痛がっていると、ムイフレスに凍てついた眼差しを向けられた。
令嬢は眉を下げて、ボンネットの紐を解き、それを下ろしながら立ち上がる。
紐で隠れていた喉仏が顕著に現れた。
「ごめんなさいね。ムイフレスに番が見つかったと聞いて、居ても立ってもいられなかったのよ」
「ボク。ボク。勘違いなの?」
「アタシ。この姿だけど異性愛者よ。よろしくね番ちゃん。アタシはキリーベルよ。キリーベル・ヴォンリックよ」
「ボクは、トトトゥーナなの」
「素敵な名前ね。ムイフレスと同じでこの姿を見ても何も言わないのね」
トトトゥーナはただ言いそびれただけなのだが、キリーベルに感心された。
「お前がどんな姿だろうと、俺は気にしない」
ムイフレスはそんなことを言ってキリーベルを喜ばせているが、実際に裸だろうと気にしないだろう。
「でも本当に番が見つかって、アタシはもちろん嬉しいわよ。でもソフィアが何て言うかしらねぇ」
「ソフィアって、誰なの?」
眉を寄せるトトトゥーナの額にムイフレスはキスをする。
「気にする価値もない」
ぺちん、とトトトゥーナはムイフレスの頬を軽く叩く。
「誰、なの?」
ムイフレスは嫌な顔をすることはなく、初めて叩いた手を大切そうにトトトゥーナの手を掴んで愛おしそうに手を撫でる。
「初めて頬を叩いたな」
キリーベルは顔を引きずるのだった。




