第20話
トトトゥーナはムイフレスを宥めて、ギットレイドに酵母菌について説明しようとまして、ふと思い、質問した。
「リンゴ知ってる?」
「リンゴ? もちろん」
その前にミルクで通じたことに、別の星でも同じ食べ物や飲み物があることを知る。
ホッとするトトトゥーナは、ギットレイドに説明した。
「リンゴを使うの。皮は剥かずにそのままなの。ダイズ状やくし型、または磨り下ろしてなの。それをリンゴ、砂糖、水を瓶に八分目くらいまで入れるの。それを直射日光の当たらない場所に置いて、一日に一、二回フタを開けて新鮮な空気を入れて、瓶を軽く振って中身を混ぜるの。最初の一、二日は雑菌繁殖を防ぐためにあまり頻繁に開けないで、泡が出てきたら混ぜる回数を増やすの。それを三日から一週間続けてなの。瓶の底から細かい泡が絶えず上がったりすると、リンゴが浮いてくるの。フタを開けたときに音がして、耳を澄ますと、シュクシュクと聞こえるの。完成したらザルを濾して、液体のみを冷蔵庫で保管するの」
「思った以上に長いのだな」
「ついでに元種を教えるの」
「まだあるのか。元種とは何だい?」
「先程作った液体に小麦粉を混ぜて、パンを膨らませる力を強めた発酵の塊なの。液体のまま使うよりも失敗しにくくなるの」
「待った」
今まで黙っていたムイフレスが声を上げた。
「思っていた以上のことだ。商人ギルドで登録させたい。本来ならなめらかなスープもプンクリンもマヨネーズも登録されるべきだ」
ギットレイドはハッとする。
「私がしたことが、思い当たらなかった。だがいいのかい? 金のなる木として注目されてしまうぞ?」
「殺すから心配するな」
「確かに竜人の番にちょっかいを出せば、殺されても文句は言えまい」
納得するギットレイドに、トトトゥーナは驚く。
「えっ!? 殺しちゃ駄目なの!」
自分の言葉にトトトゥーナは思い出す。邪神になり裏切った恋人と浮気相手だけでは足らず、人族の娘たちを殺そうとしたことを。
どの口が言うのか。
心が沈んでいるとムイフレスが額にキスをしてきことに心が浮上する。
「心配するな。裁判でも勝てるから」
「勝敗を気にしている訳じゃないの」




