第127話
ハアシュカがやめさせる。
「我々はお忍びできている。頭を上げてくれ」
カーターはゆっくりと頭を上げる。
「足を運んで頂き光栄ですが、何故こちらにお越しになったのでしょうか?」
「それはあなたが邪神教の信者だからだ」
ハアシュカの発言に、ムイフレスとニヴェス以外驚く。ムイフレスは興味がなさそうだが、ニヴェスはやはりそうだったか、と納得する。
トトトゥーナはニヴェスを見る。
「ニヴェスは知っていたの?」
「昔里にお姉さんと共にいたんだ。里にやってきた邪神教の伝教師と共にお姉さんと出ていってしまった、優しい隣人だったんだ。それから一人で里に帰ってきた。とても傷ついて。そしていつの間にかいなくなっていた。ここで孤児院の院長をやっていると知り、とても驚いた」
「私は、抜けました。姉が生贄に選ばれて、ただただ死んだんです。それを目の当たりににして。一度里には帰りましたが、辛くて。里を出て、ここまで流れてきて、前任の院長に拾ってもらったんです」
玄関でコゼットがカーターの話を聞いていた。
カーターはそれには気がついていないようで、続けた。
「私の胸には、邪神教のシンボルである目玉に黒い薔薇が刻まれています。私は……地獄へ落ちるでしょう」
ハアシュカはそうだ、と肯定する。
「地獄へ落ちるほど、あなたは幹部だった。なら知っているはずだ。この辺境で大きな集会が開かれることを。そこで生贄が捧げられることを」
「私は何も知りません」
「知っている人物は?」
「知ってどうするつもりですか?」
「生贄をできれば助けたいのだ」
できれば、という言葉にトトトゥーナは首をひねる。
「どうしてできればなの? 必ず助けたいじゃないの?」
「生贄はこの国の廃王太子だからだ。国王陛下は父親として内密に我が竜王陛下に書簡を送ってきたんだ」
トトトゥーナは目を丸くする。
「何をしたの?」
「卒業式の場で婚約破棄をした上に、婚約者だった公爵家令嬢を牢屋に入れたんだよ。庶子の男爵家令嬢に唆されてね」
「浮気したの?」
顔を歪めるトトトゥーナに、ハアシュカは頷く。
「ハアシュカは卒業式に参加してたの?」
「王太子である父上の代理でね。本来は兄上が参加するはずだったんだかね。前もってこの国の王太子が婚約破棄をすると知ってね。馬鹿らしいと私に回ってきたんだよ」
「ハアシュカは回さなかったの?」
「まさか。傲慢で愚かな王太子が転げ落ちるのを見るのはそうそう見られるものじゃないからね」
マージョリーは溜息をつく。
「いい性格をしているでありますよ」
「“清らかな息吹き”も同伴できたらよかったんだけどね」
「同伴できなかったのは残念でありました。竜王妃とお茶会でありましたので」
「まあ。竜王妃が妖精竜である君に対して気にかけていることをアピールして頂けるのは嬉しい限りだ。妖精竜を見下す者に対して牽制になるからね」
「それで、廃王太子が生贄にされて、どうして竜王陛下に話がくるの?」
「竜人の国とこの国はまあ、同盟を結んでいるからね」
カーターは立ち話をさせていることにハッとし、中に招き入れるのだった。




