第122話
美しい少女が笑っている。
訓練場で多くの隊員が倒れ、集められた回復役がボロボロになっている隊員を癒している。
「さあ。かかってくるであります!」
側でギットレイドか止めるように言っているが、聞いていない。
傍らにはこれまた美しい男がいる。ギットレイドとよく似ていて、美しい少女はエリュシアによく似ていいるが、エリュシアの方が背が高い。
ボロボロになっている隊員は癒されて、美しい少女に向かっては倒される。その繰り返しである。
「もう嫌だ」
「隊長の命令だぞ。逃げるな」
ボロボロになっている隊員が泣く。
意識を失いかけているヤーファが美しい少女の前に立った。ヤーファは元警備兵だったが、駄目元で受けた六回目の入団テストでまさかの合格をして、キリーベルに辺境伯家の騎士に誘われていたのを泣きなから断わった。キリーベルは快く祝い、ヤーファはまた泣いた。そして念願の騎士になったのである。
美しい少女は意識を失いかけてなお立っているヤーファの気力に関心する。
美しい少女は唇を舐める。
跳んで、刃が潰されている槍で突く。
ヤーファは刃が潰されている剣で突いてきた槍を押し返した。
美しい少女は目を見開く。押し返されて懐が空く。ヤーファは跳んで空いた懐に剣を向けようとして、膝から崩れ落ちた。
ヤーファはそこで意識を失っていた。
美しい少女は槍を下げる。
「彼は化けそうだね。“清らかな息吹き”の突きを押し返すなんてね」
美しい男が美しい少女に近づきながらヤーファを見る。
美しい少女は頷くが、だがと言う。
「自分は回避できたであります。回避を受けてその先の動きが大切であります。おそらく彼はまだそこまで動けなかったと思うでありますよ」
「気が済んだか?」
ムイフレスが美しい少女に声をかけた。美しい少女はハッとして、慌ててムイフレスに敬礼した。
「ベルベルト隊長! お久しぶりであります」
美しい男はにこにこ笑う。
「おやおや。“帰る愛しき場所”じゃないか。息災だったかね?」
「どういう意味なの?」
ムイフレスに抱き抱えられているトトトゥーナが首をひねる。
ムイフレスは呆れたように言う。
「こいつがハアシュカで、暴れていたのが妖精竜のマージョリーだ。竜人族は竜人族の古代語で名前をつける傾向があるんだ。俺の名前は古代語で“帰る愛しき場所”という意味があるんだ」
ハアシュカは続けて言う。
「ちなみに私は“聖なる炎に守られし者”という意味がある」
トトトゥーナはギットレイドを見る。目線で気がついたハアシュカは、にっこりと笑うのだった。




