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第11話

「ここが厨房だ」

厨房に案内するエルアーノは、料理人に声をかける。

「すまないが、ミルクが欲しいんだが」

料理人は皿洗いをやめ、エルアーノに歩み寄った。

「ミルクですか?」

「スープに入れてほしいの」

料理人はエルアーノの後ろから顔を出したトトトゥーナに眉を寄せた。

「こちらは?」

そのままエルアーノに顔を向ける料理人にエルアーノは困った顔をする。

「ベルベルトの番だ。手を止めて申し訳ないが、ミルクが欲しいそうだ」

料理人は目を丸くする。

「確か七番隊長の」

「八番だ」

「その番様が料理に文句を?」

「ミルクが欲しいだけだ」

ミルク、ね、と料理人はトトトゥーナを見る。

「口に合いませんでしたか?」

「ミルクを入れるとまろやかになると思うの」

料理人は鼻を鳴らす。

そこに料理長が何事かと寄ってくる。

「どうした?」

料理人がトトトゥーナの言葉を伝えると、料理長は面白そうに鍋の中にミルクを入れた。

そんな簡単にミルクを混ぜる料理長に料理人は唖然した。

「ガハハ。これでまろやかになるんか?」

小皿にスープを注ぎ、味見する料理長は目を丸くする。

「確かに嬢ちゃんの言う通りやな。ミルクを混ぜたらまろやかになったわ」

料理人も小皿にスープを注ぎ味見すると目を丸くする。

気になったエルアーノも小皿にスープを注ぎ、味見する。目を丸くするエルアーノは唇を舌で舐め回した。

「確かにな」

トトトゥーナはエヘヘと笑う。

「元々のスープも美味しいの」

「他に何かないんか?」

そう聞く料理長に、トトトゥーナは困る。

「そう言われても。なら……プリンはどうなの? ボク。プリン、好きなの」

エルアーノたちは首をひねる。

「プクリンのことか?」

「何なの?」

「鼠系の魔獣だ。一匹見たら三十匹はいる、繁殖力が強い魔獣だ」

「何それ怖いの」

「平民にとって馴染み深い食用鼠だ」

エルアーノの話にトトトゥーナは首を振る。

「鼠じゃないの。プリンなの。デザートなの」

「デザートだと?」

エルアーノは唇を舐め回す。

「今すぐ作ってくれ」

「それはちょっと待って下さい」

料理人が慌てて止める。エルアーノはムッと料理人を見た。

「何だ? 何がいけない?」

「料理人にとって厨房は神聖な領域です。それを素人が入るなんて許されることじゃないんですよ。そうですよね? 料理長」

「いいぜ!」

「いいのかよ!」

ガハハ、と笑う料理長に料理人はガクンと肩を落とすのだった。

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