第118話
ソフィアがムイフレスに言い寄ることはなくなり、トトトゥーナに何かしてくる可能性はなくなかったが、ムイフレスはトトトゥーナを離そうとしなかった。
本来ならば番は番が待つ部屋が用意されている。
それでもムイフレスはトトトゥーナを離そうとしなかったし、トトトゥーナもそれが慣れてしまった。
執務室でムイフレスが書類を呼んでいる片やトトトゥーナはソファーで絵本を眺めていた。まだ字が読めないので、絵本で字を覚える練習をしていた。
朝から廊下を走る騒がしさが続いている。
絵本から顔を上げたトトトゥーナは、ムイフレスに顔を向けた。
「今日何かあるの?」
「ああ。竜人国の王女がお忍びでやってきているんだ」
「王女様が? 何でなの?」
「辺境伯の視察だが、それは表向きで、実際は王太子の元護衛騎士の休養だ。王女はそれについてきたために面倒臭くなったようだな」
「どうしてついてきたの?
「元護衛騎士の番だからだ」
「知っている人なの?」
「王太子の元護衛騎士は、ハロルド・アレキサンドリアというんだが、兄弟と呼び合う仲だ。王女は確かクージュというはずだ。王女が生まれたときには国を出ていたからな。実際に会ったことはない」
兄弟と呼び合う仲がいることに、トトトゥーナは目を丸くする。
「どんな人なの?」
「元々アレキサンドリア一族は聖女の護衛騎士を務めてきた一族なんだ」
「聖女?」
「休養だと言っただろう。襲撃された王太子を庇って腕に麻痺が残ったようでな。今日ここにくるのは兄弟である俺に会いにくるんだ。王女がついてきて面倒臭くなったがな。そこでトゥが腕の麻痺を治すと、聖女だと騒ぐだろう」
トトトゥーナは顔を歪めた。
「聖女が絡まなければ、いい奴なんだがな」
「王女様はどんな人なの?」
「さあ? 知らんし、興味がない」
「自国のお姫様なのに?」
「ああ」
「そういえばギットレイドとこの国にきたの?」
ムイフレスはそうだな、と頷く。
「自分で何一つやったことがないのに、冒険者や騎士に憧れていたな。結果騎士になったが」
「王族なのだから、やってもらうのは当たり前じゃないの?」
「あいつぐらいだぞ。パンツの表か裏、分からないのは」
トトトゥーナは目を丸くするのだった。




