第116話
しばらくするとノックされ、ムイフレスが入る許可を出すと、隊員がレオンたちを連れてきたと報告する。
隊員は出ていき、入れ替わりにレオンと我が儘嬢であるソフィアと、美しい男が入ってきた。
「隊長。時間を取ってくれてありがとうございます」
レオンは頭を下げる。ソフィアも倣って頭を下げる。美しい男はソフィアのお腹から目を離さない。
「そこにいるの者が、ソフィア・ヴォンリックの番か?」
「それは違うんです。俺もソフィアの番だと思ったんですけど、お腹の子供の番なんです」
トトトゥーナとギットレイドは目を丸くするが、ムイフレスは興味がなさそうである。
「それで? 何の用だ? その女がまた下らないことを抜かすなら、飛ばすぞ」
「飛ばさないで下さい! 実は、お腹の子供の名付け親になってほしいんです」
そこで初めてムイフレスは驚いた。
「レオン。知らないかもしれないけど、竜人族に名付け親になってもらうというのは、第二の親になるということなんだよ」
ギットレイドが説明する。レオンは知っています、と答える。
「子供の教育に口出しができるんだよ」
「知っています」
「ちゃんと分かってる? 結婚だって、レオンたちが反対しても、フレスが賛成したら、結婚式で花嫁の腕を組むのフレスになるんだよ」
「はい」
「何でそこまで?」
レオンは耳を伏せながら美しい男を見る。
「彼。シルディオスっていうんですけど、古代竜の黄金竜だそうなんです」
ギットレイドは目を丸くする。トトトゥーナはその反応で珍しい種族だと悟る。
「俺、情けないんですけど、子供の名前浮かばなくて。隊長に古代竜の番に相応しい名前を頂戴しようかと思いまして」
ギットレイドはムイフレスを見た。
「どうするんだ? 最悪レオンが死ねば、フレスがレオンの子供の教育費を払う義務が発生するぞ」
「ボクは構わないの。別にレオンが死んだら我が儘嬢と結婚する訳じゃないのなら、いいの」
「アンリローデ」
ムイフレスは呟いた。
「竜人族の古代語で、意味は“消えぬ松明”。その胸に灯る火がある限り、闇が飲み込むことはない。誇り高く掲げよ。皆を照らす希望の標となるだろう」
レオンは泣いた。
「生まれてくる子供に必ず伝えます!」
ソフィアも気に入ったのか、まだ目立たないお腹を撫でた。
トトトゥーナとギットレイドは、ちゃんと考えたムイフレスにやればできるんだと思うのだった。




