第113話
「トゥーナ」
ロキフェルドはポヌリスの胴体を踏みつける。すると塵となった。
それを何も思わないトトトゥーナは、ムイフレスのことが心配でしかないことに、すでにポヌリスを乗り越えていると自覚した。
ロキフェルドは口元に手を持っていき、光の玉を口から出した。
「トゥーナの力だよ」
「ボクの?」
ロキフェルドはトトトゥーナに向けて光の玉を吹きかけた。光の玉はトトトゥーナの胸に吸い込まれていった。
その瞬間ひどい眠気に襲われる。
「抗わなくていいんだよ」
トトトゥーナの頬にムイフレスの大きな手が触れる。
「俺なら大丈夫だ」
「うん」
安心するように、トトトゥーナは瞼を閉じた。
ロキフェルドはシグレを見る。
「シグレ。愛してる」
「私もお慕いしております」
二人は抱き合った。
トトトゥーナたちをリデルエリエーゼとグレンアーグは見ていた。
「どうやら大丈夫みたいだね」
「そうね」
「リディは優しいね」
「さあ、どうかしら」
グレンアーグはリデルエリエーゼの白い手を取り、指先にキスをする。
リデルエリエーゼは鼻を鳴らす。まるでそれをすることはグレンアーグしか許してなどいないというように。
グレンアーグはそのことを分かっているかのように、また指先にキスをするのだった。
美しい娘だった。
トトトゥーナが知ったとき、美しい娘の腹は大きかった。
美しい娘の傍らにいたポヌリスは、ヘラヘラと笑っていた。
ポヌリスの半神の力を取り上げ、それだけではなく邪神になった。
全知全能の神によって強制的に眠らされた。
恋多き父親とポヌリスが重なった。
母親は邪神などならなかったのに。
どこか違うのか。
トトトゥーナは分からなかった。
温かい光の玉はポヌリスの記憶が混ざっていた。
美しい娘はどこかの王族の王女だった。
シャロットヴェナ。それが美しい娘の名前だった。
雨を呼ぶために人柱に選ばれた。
哀れに思ったポヌリスが顕現し、雨を降らせた。
人柱だったシャロットヴェナをそのまま国に置くことはできないと、ポヌリスは天界に連れて帰った。
シャロットヴェナは、怒り狂うトトトゥーナの存在をそこで初めて知ったのだ。
力を取り上げられたことに、ポヌリスはそれだけが気がかりで、孤立なシャロットヴェナを気にかけることはなかった。
寂しいと泣くシャロットヴェナは、男の子を生んだ。
まともに育てられないシャロットヴェナの代わりに子供好きな女神たちが育てた。
あまりにもシャロットヴェナが泣くので、全知全能の神の妻であるキュアトリーが、安定している世界に転生者として送った。
生んだ男の子を残して。
トトトゥーナは、シャロットヴェナを殺させないようにした全知全能の神の行動を理解できなかったが、光の玉を通して理解することができたのだった。




