第110話
「パン屋はここを含めて五軒ありますね。我々商人ギルドが仲介しましょうか?」
エドモントが商人の顔になる。ジャンは困ったが、頷いた。
「では書類などは明日にしましょうか。今日は待ちに待った試食日ですしね」
「ああ。その方がありがたい」
「商人ギルド主導でレストランをやろうと思いましてね。レストランに卸しませんか?」
「パンは俺一人でやっている。そう多くは卸せない」
「大丈夫です。残りは他のパン屋に話を持っていきますので、それで需要を確保しますので」
「それなら大丈夫だ」
トトトゥーナは首をひねってエドモントに声をかけた。
「まだレストラン開いてなかったの? ぼく、てっきりもう開いていると思ったの」
エドモントは苦笑う。
「料理長が修業の旅に出てしまったんです」
トトトゥーナは目をを丸くする。
「どうしてなの?」
「マヨネーズとプンクリンに感動したらしいんです」
「たーしかにマヨネーズは癖になーる味だーよーねーえ」
グレンアーグがパンを食べながら話に入ってきた。
トトトゥーナはパンを食べていることに驚く。
「グレンアーグ。お人形なのにパン食べられるの?」
グレンアーグはアハハと笑う。
「魔素から魔力に変換しているみーたいだーから、大丈夫だーよ」
「魔素って?」
「んー? どう言えばいいだろう」
グレンアーグはエルアーノを見る。エルアーノはアクセルからグレンアーグの目線に気がつく。
「何だ?」
「番ちゃんに魔素について教えてあげて」
「魔素か。魔素は世界中に漂っている。それを体内に吸収したものを魔力と呼ぶ。動物が魔素を吸収し過ぎると魔獣に変異するのと、濃い魔素から魔獣が生まれるパターンがある。魔人が人族が魔素を吸収し過ぎて生まれた説と、濃い魔素から魔獣のように生まれた説がある。だから魔人は魔獣のように人々を襲うと言われているが、実際はどうだか知らない」
「魔人は迫害を受けているの?」
「それは分からないな。魔人がいることは知られているが、どんな外見をしているのか、どのぐらいいるのか、不明なんだ。もしかしたら人族と変わらない姿をしているかもしれない」
トトトゥーナはエドモントを見る。
「エドモントは魔人について知らない?」
「魔人ですか? 私も実際に見たことはありませんね」
「聞いたこともないの?」
「古い書物で読んだことはあります。確か“ドリュエド・マバードデバスでしたね」
トトトゥーナは眉を寄せる。
「何なの? どういうことなの?」
エドモントはおっと、と笑う。
「失礼しました。古代語でした」
エルアーノは目を丸くする。
「そんな昔の書物なのか?」
「子供のときに村長の家で読んだんですよ。確か魔人についつて書かれていたのは、“花柄の瞳”だったと。確か、ね」
「え?」
誰かが言葉を漏らしたのか。
トトトゥーナとエルアーノはアクセルが背負うアネモネを見た。
すやすやとアネモネは眠っている。
アネモネは珍しい花柄の瞳をしていた。
「まさか」
エルアーノは呟くのだった。




