第108話
〈赤い屋根のパン屋〉で、試食が行われた。
参加するのはトトトゥーナとムイフレス、エルアーノとアクセルにステラ、エドモント、キリーベルにエリュシアに、エリザベータと娘たち。そしてリデルエリエーゼとグレンアーグの十三人だった。エリザベータの上の娘は人族の血の方が濃く出たようで、外見は人族のようだった。それでも目元がエリザベータによく似ていた。
「アクアク!」
エリザベータの下の娘が嬉しそうにアクセルの足に抱きついた。
「こらミーア!」
エリザベータは叱り引き離そうとするが、ミーアは首を振って離れようとしない。
アクセルはそんなミーアの頭を撫でようとして、今日もまた背負っているアネモネが泣いたので、泣くアネモネを宥める。
エルアーノはあやとりをするグレンアーグに声をかけた。
「グレンアーグもきていたんだな」
グレンアーグはエルアーノに顔を向ける。
「リディがね。おーれはどっちでもよーかったんだーけどねーえ」
糸を消したグレンアーグはエルアーノを抱きしめた。
「寂しかった?」
「少し。いや、うん。寂しかった」
「俺はいつでも森にいるからね」
「うん」
〈赤い屋根のパン屋〉で奥さんと呼ばれているロザリアがトトトゥーナたちに出来立てのパンを配る。
エドモントは柔らかいパンに目を見開き、匂いを嗅ぎ、パンを二つに割る。
パンを一口口にして、目を丸くする。
「これはこれは」
それを見ていたステラはパンを齧り、目を見開く。
「美味しい」
それぞれ皆パンを食べて目を見開く。
リデルエリエーゼだけはパンに興味がなさそうで、グレンアーグにあげていた。そんなリデルエリエーゼにアリサがプリンを渡して、リデルエリエーゼは嬉しそうに食べた。
「思った以上に美味しいわね」
キリーベルは最初の一口を食べて、ロザリアを見る。
「今日はアタシも招いてくれてありがとうね」
ロザリアは首をブンブンと振る。
「こちらこそ、辺境伯家のご子息様がきて頂いて光栄であります」
女装していることには触れない。
遅れてギットレイドとニヴェスがやってきた。
「すまない。遅れた」
「遅れた。ごめんなさい」
ロザリアは二人にパンを渡す。受け取った二人は柔らかいパンに目を見開き、齧りついてさらに目を見開く。
「美味しい。あたし、これ好きだ」
「思った以上だ」
ロザリアは皆の感想にどこかホッとするが、アリサだけは眉を寄せた。
「お母さん。私たち以外のパン屋に酵母や元種のことを教えた方がいいと思うの」
ロザリアは驚き、アリサを見るのだった。




