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イニシエ  作者: 紡ぎ舞う者
第二章 教団戦編
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36話 大聖女

アース族はアルバン教団と奮闘し、城門ではファーゼンと近衛の特殊部隊、原点者がブラッディーバインドと交戦する。転移門ではアデルの両親が避難者を守り、みんなが自分のやるべき戦いをケストレア各所で奮戦する。

眼前に迫る矢を見たアデルはしゃがみ、アースクエイクで弾こうとするが間に合わないと悟り目を瞑った。

「アンチグラビティ!」すると目の前の矢はスローモーションのようにゆっくりと進む。アデルは剣で矢を全て弾き、声のした方をみた。そこには大盾を使い攻守を上手く切り替えながら戦うベルゼンの姿があった。そういえばベルゼンは雷以外も重力系統の神聖法も得意と言っていたっけな。

「助かったベルゼン!ありがとう!」ベルゼンの頬が引きつったのが遠くから見ても分かった。アデルはすぐに剣を抜きボウガンを持った7人組が潜む屋根の上に目を向ける。どうやら伏せて隠れているようだ。先にやらなければこっちが命を落としかねない。

「覚悟を決めろ俺。」アデルは地面に剣を突き立て、両手の指を4本絡める。

「手印法4束縛!」数十本の鎖が敵の足を絡め取り空中へと放り投げた。

「なっ!?束縛にこんな使い方が。」敵は驚きながらも空中で姿勢を整え、アデルに照準を向ける。しかしアデルは自身のスキルオーバードライブで身体を強化し敵の目の前に瞬間的に現れた。「なぜ、空を飛べ、?!」言い切る前に敵は真っ二つに切り裂かれた。その他の敵もアデルが剣で次々と仕留めていった。アデルの体を覆う赤黒いオーラはディジェクラント王国で発動した時よりも濃く、軌跡が残るほど強い覇気を放っていた。

「さぁ次はどいつからやられたい?」アデルは周囲の敵を挑発しながら戦いつつ、トウヤやシーラのいる方へバレッサ先生と向かった。

トウヤは燃え盛るザクバリの前で周囲の惨状を目の当たりにし、前世で最後に見た風景と自然に照らし合わせていた。

「まだ俺は傍観者なのか。」か細い声で呟くトウヤだがその目には怒りが籠っていた。

「とにかくシーラを探そう。」シーラとはさきの戦闘ではぐれてしまった。多分民家の方面だと思うがあちこちでアルバン教団が蔓延ってるせいでシーラの位置が特定できない。

「シーラ?」念話で問いかけてはいるものの応答がない。それに彼女は支援職だ。戦闘が得意なわけでは決してない。シーラもアデルとは違った意味で殺しを躊躇する。できるだけはやく見つけてやる必要があるだろう。

その頃シーラは焼けた跡の民家の隅で息を潜めていた。その両腕は教会で出会ったカミラの細い体を包んでいた。どうやら避難者の集団からはぐれてしまったようだ。

「どこ行った?見失っちまった。」

「あっちを探すぞ!」外ではアルバン教団が二人を捜索していた。シーラはカミラを自分の体へ寄せた。彼女はリスのように縮こまり小刻みに震えていた。

「大丈夫お姉ちゃんがついてるよ。」耳元でシーラ本人ですら聞こえないような小さな声で囁いた。するとカミラはシーラの包む腕をぎゅっと掴んだ。元々しゃべらない子だがこうした反応を見せてくれるのは内心頼って貰えてると分かり嬉しかった。なんとしてもこの子を転移門まで送り届ける。その前にみんなと合流したいな私戦闘向いてないし。そう考えながらシーラは外の様子を耳で把握しながら移動するタイミングを伺った。すると人が倒れる音と仲間の元へ駆け込む足音と心配する声が聞こえてきた。

「おいしっかりしろ!」そして彼の声もいつしか消えてしまった。

 レオとロキは屋根から各所の援護を行っていた。

「まずいね、シーラが孤立しちゃってるわ。」ロキはガンティルを打ちながらレオに報告した。

「こっちはリーアが囲まれてる。手が放せないよ!」二人はあーでもないこーでもないと口論しながら着実に敵の数を減らしていく。

「二人ともそこからシーラは見えるか?」突然念話でトウヤの声が飛び込んできた。

「トウヤ!今すぐにシーラの元に向かってあげて!目の前の大通りを左に進んで4軒目の民家の路地へ向かって!崩れた家の隅に小さい女子と一緒にいると思うわ。」聞き終わると念話が切れる感覚が脳に走る。

「あれ切れた?」トウヤは勢いよく走り出した。スキル神速を使ったため切れたのだろう。

「シーラの方は任せて大丈夫そうね念のため周辺の敵倒しといてあげるか。」ロキは再びガンティルを握った。

 

 その頃転移門では異変が起きていた。6つ目の国。フィリア聖王国の転移陣が光を発した。次の瞬間近衛とは違う騎士団に囲まれながら1人の少女がベールで顔を隠しサークレットをその上につけた状態で現れた。横には合同演習で代わりに登壇した男が立っている。

「聖女様?!どうしてこちらにいらしたのですか?ここはブラッディーバインドの接近があり危険です。ディジェクラントに移動するしましょう。」近衛が説得するが聖女側の聖騎士に間に割って入られた。

「安心しろ我らが責任をお守りする。それに聖女様は守らずとも強い。」声が低く片目に傷のある男が自信満々に説明した。二人は睨み合うが聖騎士は少女に首根っこを捕まれた。

「こらイルビス!相手さんに迷惑をかけるものではありませんよ。あと付け足すなら、位を引き継いだため今の私は大聖女です。」優しいかつハイトーンな声は少しばかり怒りを秘めていた。

「申し訳ございません。」先程までの威勢は途端に消えてしまった。

「してこのような時期になぜこちらに出向かれたのですか?」彼女は滅多に公の場に姿を表さない。近衛は質問するが大聖女は騒がしい避難者の群衆を見つめていた。

「いかがしました?」

「エーテルベール!」すると転移門全体に半透明なカーテンがかかり、不思議な空気が漂うと同時に人々が静まり返った。

「聖女様!?」後ろから友であるエドレスとストベラが向かってくる。

「久方ぶりね。御二方がご壮健でなによりです。10年だなんてあっという間でしたね。私も大聖女になりましたし。」二人はそれを聞くと丁寧にお辞儀をした。

「それは喜ばしいことだわ!お祝いしたいところだけど今はそれどころじゃなかったわね。わざわざ出向いたってことはここにいるの?英雄が?」ストベラが聞くと大聖女はコクリと頷いた。

「ええ、居るわ。それに原点者も来てるのでしょ?理由は一緒だと思うわ。にしても羽虫に手を焼いてるみたいね。」大聖女が指を指す先、王国の上空にはブラッディーバインドが低空で迫っていた。



36話いかがだったでしょうか是非感想と評価のほどよろしくお願いします。

X(旧Twitter)では投稿の引き続き行っています。是非フォローといいねお願いします。

次回は「希望の光よ」お楽しみに



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