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イニシエ  作者: 紡ぎ舞う者
第二章 教団戦編
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34話 助け舟

邸宅に戻ったリーアは父の生存を確認した後立ちはだかる障壁を乗り越えケストレア王国に戻る。ブラッディーハイドが接近してくることを伝え、避難者たちの誘導をしていたが、アルバン教団に阻まれる。一方城壁はというと・・・

夕暮れ時のケストレア王国の正門の上にエミート率いる特殊部隊が到着していた。

「遅れてすんませんファーゼンさん、何しろ場内でアルバンの連中に絡まれまして。」冷や汗を拭いながら帽子をとり頭を下げる。

「そういった事はよい。それよりもあの軍団撃ち落とせるか?」ファーゼンはあきれながらも鋭い視線をブラッディーハイドに向けた。先ほどよりも羽の形状や足の爪が目視で識別できるほどに近づいてきている。

「ありゃあ想定してたより数が多いですね。撃ち落とせなくはないでしょうが、こちらに到着するまでに捌くのは正直きちぃす。あの鱗は特殊ですからガンティルさえも歯が立ちずらいんすよ。」文句を言いながらもエミートは自身のガンティルを取り出し、調整をはじめ、他の隊員もその場で調整を始めた。

「調整が済み次第ここの守備部隊の隊長に挨拶しておくんだぞ、あくまで私は生徒の護衛なんだから。」ファーゼンが呼んだと勘違いしていたエミートは駄々をこねた。

「えーせっかく呼ばれたと思ったのに。ファーゼンさんが指揮執ってるんじゃないんですか?」

「当たり前だろう。もう若くないんだから。」ファーゼンのもう若くないという言葉を聞いたエミートは少しさみしい顔をした。

「でも師匠はまだ力衰えてないでしょう?その覇気昔から変わってないですよ。」

「君は千里眼を持っていたのだったな。それでも歳には抗えんよ。」ファーゼンは視線を地面にそらした。

「まぁ歳だろうとケガだろうと師匠が私を育ててくれたことに変わりはありません。」エミートは調整を終えて立ち上がり標的に照準を向け片目を瞑った。直後爆発音と共にエミートのガンティルか弾丸が砲身より押し出され、巨大化したと思ったら敵目掛けて一直線に向かっていった。弾丸が空高く弾けた数秒後に爆風が押し寄せ周りの草木をしならせた。

「ふー、風向き問題なし。」


 その頃ブラッディーハイド戦闘団中枢に位置する隊で一人の男が闘志を燃やしていた。

「これだけの軍団がいりゃあ人間なんて木っ端みじんだな!バルバトス?」その男の名はバルバトス。亜種族に生まれた教導者である。

「油断するなよカーリー。一度この隊は全滅して再編成したもんなんだから。もしまた敵が同じ方法で攻撃してきたらこっちが怒られる側だぞ。」バルバトスは親友のカーリーにぼやかされたのをよく思わなかったようだ。

「でも今回はお前がいるだろ?亜種族の狩人さん。その背中にしょってる弓で敵なんて一発だろ?」亜種族の中でもトップの実力を持つものに与えられる称号狩人。一人で戦場を覆せるほどのまさに化け物というに相応しい。

「無茶言うな。弓でもあの距離まで飛ばすには相当な力がいるわ!とはいえ僕もウォルゼンの仇は取りたい!」バルバトスは爪が食い込むほどに拳を握り、手の中から血を滴らせた。

「おいおい?!自分で怪我作ってどうすんだよ。ヒール」カーリーはバルバトスに回復魔法ヒールをかけてやった。

「すまんつい、・・・」バルバトスは申し訳なさげに言った。

「あんまり突っ走んなよ。俺らが追いつけなくて死んじゃうかもだし。」カーリーが少し笑いながら話していた次の瞬間、隊の先頭にいた仲間が悲鳴をあげた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」何かの爆発と共に同胞が地へ落下していった。

「どこから攻撃を受けた!」バルバトスは綱を持ちながら立ち上がり周囲の仲間の状況を把握した。

「城壁の上からだ!ものすごい勢いで迫ってきて急に仲間がはじけ飛んでいったんだ。指揮官もやられちまった!」それを聞いたバルバトスは冷や汗をかいた。間違いない。銃による攻撃、人間が扱えるガンティルっていう飛び道具だ。

「俺が前に出る!みんな第三隊列でついてこい!」バルバトスは急降下で仲間の下を潜り抜け先陣を切った。仲間も戸惑いながらもバルバトスについていく。

「いい子に飛んでくれピティ。」ピティとはバルバトスの赤竜の名前であり前に乗っていた者からの請負だそうだ。いい子に飛ぶ。それは水平に姿勢を崩さず飛ぶことだ。バルバトスは綱を持たずに立ち上がる。左手で背中の弓を肩から下ろし、右手で一本の矢を弦にかけて思いっきり引き絞った。

「仲間のウォルゼンの仇!」右手に赤黒い稲妻が走るとそれに呼応するかのように矢もその力を帯びる。

「吹き飛べーーーーー!」力強い弦の音と同時に空気を突き抜ける矢尻のヒューという音が遠ざかりながら放った矢は弧を描いて飛んで行く。

 一方エミートとファーゼンは全体に隊列を組ませ発砲準備を整えていた頃、不意に禍々しいオーラがこちらに接近してくることを察知した。

「全員頭伏せろ!」エミートの咄嗟の警告に生徒、ファーゼン、隊員はしたがった。

エミートは向かってくる矢を照準に捉え、正確に撃ち抜く。矢が折れると空中で爆発し黒煙が目の前を覆った。

「チッ、目ぇ遮ったつもりかよ。ファーゼンさんこの煙振り払えますか?」煙の中微かに見える人影にファーゼンは言った。

「いつでも払えるぞ。」するとエミートは姿勢を崩さず指示を出す。

「全員照準合わせ!俺が構えている方向に構えろ。撃ち抜くタイミングは一緒だが、狙う獲物は任意だ!」隊員は次々に城壁や隊長の後ろからガンティルを構えた。

「準備はいいな?ファーゼンさんお願いします!」するとファーゼンは両手を左右に広げ唱えた。

「ウィンドストーム!」突如黒い煙が晴れ、視界が良好になった。

「目標多数!放て!」エミートの号令のもと射撃が開始された。

「次弾いそげ!」相手に隙を与えないよう次から次へと弾を打ち続ける。

バルバトスは敵がさらに攻撃してくるとは考えておらず、激しい弾幕にさらされる。

「正面にシールド展開!無茶してでも突き抜けるよ!」エミート率いる特殊部隊の攻撃は強烈だが、バルバトスの策略がそれを上回った。

「隊長敵が固すぎるであります。」エミートもそれは実感していた。先頭の敵のオーラが近づけば近づくほど強さを増していった。

「こらちときちぃーな」

「なら妾が助けてやろうぞ。」弱音を吐いたエミートの耳に突如女性の声が響いた次の瞬間敵の飛んでいる辺りの地面が盛り上がり、竜を串刺しにした。上空を見ると驚く存在がそこに浮いていた。茶色の長い髪に藍色の瞳、振り袖が長く白い肌の女性。

「なぜここにいらっしゃるのですか?」オリフィア・ハーツまたの名を原点者。

「妾の大地での蛮族行為。万死に値する。」

34話をご覧いただきありがとうございます。

是非読んで感想と評価をお聞かせください。

またX(旧Twitter)で作品投稿の告知をしています。フォローといいねよろしくお願いします。

#イニシエで検索してみてください。

次回35話は「苦難を越えて」お楽しみに

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