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イニシエ  作者: 紡ぎ舞う者
第二章 教団戦編
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30話 攻守(前編)

アデルたちアース族は教会につきバレッサ先生と再会した。ここでの行動や物品の説明を受ける中、前線へ向かうシスターが決められていた。未来ある若者を残し年寄りを先導してベリアは門へと歩みを進めた。

教会では防衛をどうするかをトウヤとメリア族のリーダーであるウルと話しあっていた。

爆発があちこちで鳴り響き次第に煙も空気に混じって濃くなりはじめた。教会には怪我人や重傷者が押し寄せベットが足りなくなる始末だ。

「こっちに包帯追加して。シスターも適宜ポーションで神聖力を維持して!重傷者を出来る限りカミラちゃんの部屋へ。シーラさんに治療を手伝うようお願いして!」緊迫した状況の中でもハイラは的確な指示を出し、シスターとアース族を束ねた。

「避難者はできる限り奥へ詰めて座ってください。私達が通れる道を作ってくださるだけで結構ですから。」教会も500人を収容できる広さがあるが手狭になりつつある。

「おらァどけ小娘!」ベットを使っていたカミラを年老いた男性が無理やり引きずり下ろした。カミラは地面に倒れ、打った肘を手で覆い、悶えていた。シーラは怖がりつつも男性の腕を掴んだ。

「や・・・、やめてください!カミラちゃんはまだ子どもなんですよ。」男性はシーラを強い眼光で睨みつける。

「おらぁただ許せなかっただけだ。大人がベットを二人一組で使っている中こんな小さな娘一人に貸してられるほど俺らだって余裕があるわけじゃないんだぞ!」そういってシーラの手を振り払った。周囲も彼に同調した。でもシーラは知っていた。彼、彼女らは別にベット一つを占領している事に怒っているわけではない。カミラの病気、蒼永の蓮華を恐れているからだと。

イニシエの1ページにもされている病気の一つ蒼永の蓮華はその力を使うことなく死ぬことから死者の灯とも揶揄されることのある術式だ。扱いが難しいのと同時に大量の神聖力を術式を発動していなくても消費し、命を削ってまでもその力を発揮しようとする。またこの術式は暴発した時に周囲の人間に種子を蒔き芽吹かせて死に至らしめるため一時期は亜種族とも扱われた。しかし現在はポーションの発明から神聖力が無条件に回復できるようになり

今までの事例も無くなってきているが、古い印象がまだこびりついたままなのだ。

「では私がその少女と寝ようじゃないか。」奥から老婆が一人しわのはいった手を高らかに天井めがけて挙げた。ゆっくりと杖を付きながらカミラへと近づき、手を差し伸べた。

「私はね。知っているんだよ。お嬢さんみたいな蒼永の蓮華の持ち主が私たちを助けてくれたことを。生い先が短い私だけど一緒にベットで寝てもいいかい?」カミラは瞳に涙を浮かべながら老婆の手を恐る恐るとった。男性も特に何も言わずに沈黙していった。

「ありがとうございます。本当だったら私が止めなければいけなかったのに。」シーラはおばあさんに向けてお辞儀をした。

「いいのよお嬢さん。それにあなた、他人に注意することは向いていないわ。今は自分にできることをやるの。あなたは治癒士なのでしょう?ここに運び込まれた人たちの中には怪我人も多いはずよ。彼らの力になってあげて。」おばあさんの言葉がシーラにとって暖かく感じた。

「ありがとうございます。でも私が頼まれたのはカミラちゃんを守ることですから。」シーラはおばあさんに感謝をしつつもべリアさんから預かったこの子から離れてはいけないと考えたのだ。


 教会前の大扉には沢山の人が駆け込んでいた。

「こっちに!早く!」ウルは率先して避難者を匿い、危機に目を光らせていた。そんななか夫妻らしき二人が結界目前で倒れた。ウルはすぐに駆け寄る。

「大丈夫ですか?」声をかけたが反応がなくこれはいけないとウルは考えた。

「結界内まで来れば安全ですよ。」ウルが婦人に肩を貸したその時だった。彼女の下から鎌の刃が飛び出し顎の辺りまで迫る。

「まずは一人っ・・・なっ?!」金属音が耳元で鳴り響いた。顎と刃のわずかな隙間に剣が挟み込まれていたのだ。

「私が警戒していないとでも思ったの?素人らしい考えね。」煽り口調なウルの背後で夫を装った方が小太刀を振り上げる。

「死ねーーー!ぐはっ!」刃が届く前にウルは腹に後ろ蹴りをおみまいした。更に剣の柄で婦人を気絶させる。

「他も出てきたら?」町の中央から教会までは一本道となっており、両側には並木と低木が生い茂っている。その陰から不気味な仮面を被り、フード付きのマントを羽織った怪しい集団が顔を見せた。その背中には彼らの体格に近いほど大きな鎌を担いでいた。

「随分と隠密が得意なようね。」それぞれの強さはそれほど脅威じゃない。問題は数が多すぎることだ。

「我らはアルバン教団。憎き国政とセルリアに反発するもの。」アルバン教団という単語にウルは鼻で笑った。

「アルバン教団?あのいかれた連中がなんで教会なんて狙うのよ?」こんなことを聞いてもまともな答えが帰ってくるとはウル自身思っていなかったが今回の襲撃の何か経緯を探れると考えた。

「我々は失った者たちを開放する。」

「失った仲間を取り戻す。」

「そのため人間殺す。」口々に開放する。取り戻すなどまるで誰かが囚われているかのように彼らは言う。

「その仲間とは罪人か?」ウルは問う。

「違う!彼らは犠牲者だ!」

「世界のために身代わりになった犠牲者たちだぁ!」彼らの言っている事が理解できないウルは剣を構えた。

「どんな理由があれど他人を傷つける行為は認められないわ!かかってきなさい。」ウルが叫ぶと彼らは呻き声を挙げながら背中で担いでいた大鎌を抜いた。

「お前は間違った選択をしている。」

「アルバンの名のもとに裁きをくれてやる!」低木を飛び越え、十数人がウルに切りかかった。ウルはかがんでまず先頭の敵の姿勢を蹴りを入れて崩した。それに後ろから続いた2、3人も巻き込まれて転んでいった。それを避けて左右から二人が鎌を振り下ろすが、先にウルが持ち手と刃を切り離し、敵は一瞬戸惑った顔をした。その隙に転んで起き上がろうとしている敵を踏み台にして高く飛び上がった。

「ソニックボルト」雷鳴と共に空から複数の稲妻が降り注いだ。敵は次々に麻痺しその場に倒れた。その横で木陰からボウガンを構える者が残っていた。ウルが油断したその時男は引き金を引こうとしたが、空気の塊が手元に辺りボウガンが砕けた。

「相変わらず腕がいいなミルティ。」教会の鐘の開けた場所でガンティルを構えるロキがいた。

「なんでリーアといいあなたといい私をあだ名で呼ぶのかしら?」ロキは不満そうな声色だ。

「それはともかく遠方の状況はどうだ?」ウルは町の様子を気にしていた。

「近衛が鎮静化を進めているわ。民間の組織なんて火の粉を払うようなもんでしょ。」ロキの言葉にウルは胸を撫でおろした。

「ならいい。我々は貴族の娘としてできることをやろう。」

「ええ。」

30話読んでいただきありがとうございます。コメントと評価お待ちしています。

予告していた攻守が予想以上に長編となったため3部に分けてお届けいたします。

またX(旧Twitter)にて投稿の告知をしています。フォローといいねお待ちしています。

次回は「攻守(中編)」お楽しみに

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