28話 戦場
それぞれが現状がわからないまま生徒たちは呼び出された。各国への襲撃に対し生徒の支援を指名されたアース族を含めた4族はケストレア王国へと転移した。
アデルたちアース族、ハゼルド族、パチルム族、メリア族は無事ケストレア王国への転移に成功した。
「何だこりゃ。」思わぬ光景にアデルは衝撃を受け、言葉を漏らした。各国への転移を希望する一般市民や商人で転移門前は溢れかえっていたのだ。
「お待ちしておりましたファーゼン先生。」僕らの引率役として選ばれたのは基礎学でおなじみのファーゼン先生だ。ファーゼンは髭をいじりながら逃げようとしている民衆を見た。
「どこで情報が漏れたのかのう。」侵攻の事実は軍のほかは生徒、教師、原点者しか共有されていない。ファーゼンは何か引っかかったようだ。
「詳しくは分かりませんが、どうやらアルバン教団が魔族の侵攻が始まると、町の中央で演説をしていたようです。それを民衆が信じてしまったようで。」ファーゼンは顔をしかめた。
「余計な真似を。どうやらアルバン教団はすでに亜種族と連携がとれるまで関係が深いらしい。となると危惧するべくは正面から来る亜種族軍ではなく、」
「内部からの不意打ちですね。」ファーゼンの言葉と重なるようにトウヤが発言をした。
「アルバン教団は一般市民からできた団体だ。正面からの攻撃が防衛ができたとしても内部から崩されてはひとたまりもない。ですよね先生。」トウヤの視線にファーゼンは頷く。
「できる限り連中に気づかれないように各国の近衛にこのことを伝達します。」そう言い残して近衛は上層部へ向かった。
「さて諸君。これから医療担当と運送担当の二班に分かれてもらう。」近衛を見送るとファーゼンは指示を出した。
「アース族とメリア族は医療担当だ。後方で救命に全力を尽くせ。ハゼルド族とパチルム族は運送担当だ。前線にポーションを運ぶ役割を担ってもらう。尚、運送にはわしが護衛としてつく。安心せい。」運送担当の族は少し怯えていたがファーゼン先生が付くと聞き、体の震えも少し和らいだようだった。
「重ねて言うがここは戦場だ!いつもの戦い方では足元を救われかねん。互いを助け、自分の命も守り続けてこそ戦場というおぞましい場所で生き抜く術だ。」ファーゼンは力強くそして語る様に重く言葉を並べた。
「生徒を戦場に送り出すなど不本意だが、人数不足も否めん状況だ。必ず・・・必ず生きて帰れ!」その言葉に僕たちは奮い立たされた。
「はい!」
これでいいんだよなセイゲル。ファーゼンは心の中でそう思っていた。
昨夜の統括局会議にて机をたたく音が響き渡った。
「冗談じゃない。弟子を戦場に行かせる師匠がどこにおるか!今すぐ先の発言を撤回せいコディス!」コディスは眼力を強くしてセイゲルを見返した。
「セイゲル、落ち着け。これは議長の承認を受けた決定事項だ。覆すことは許さないぞ。」セイゲルは視線をへカルテに向けた。しかし彼女は口を開くことはなかった。議長の決定事項は議長の撤回がない限り覆すことができない。
「見届ようではないか。セイゲル。君の弟子がどれ程まで我々の期待に答えてくれるか。」そう発言したのは原点者だった。セイゲルは無言のまま管理室を後にしようとした。しかしそれをへカルテが止める。
「セイゲル。君を弟子の元へ向かわせるわけには行かない。ここで留まるよう命じる。」セイゲルはへカルテを、統括局をにらんだ。
「そのような我の混じった指示をおとなしく聞けと言うのか。わしを止めたければ力尽くで止めて見せよ。最も、束になってもわしには敵わんと思うがのう。」しかし統括局の誰もが動かない中、セイゲルの行く手を岩壁が塞いだ。
「では童なら互角に相手できるかのう?」原点者だ。
「原点者!公平であるべきあなたが何故首を突っ込む!」原点者は少々あくどい顔をしながら答えた。
「アデルに少々興味を持った。それだけでは理由足らんか?」セイゲルはアデルの名前が原点者の口から発せられ驚いた。もうすでに調査した、そう思わせたいのだろうとセイゲルは考え、手を構えた。
「良いのですな原点者様。怪我ではすみませぬぞ」
「お前の攻撃など童に当たるはずもなかろうそれに貴様は手を出さない。なにせ童が死ねば星が滅ぶからな。」原点者は星の守護者にして生命の源である。故にどんな人も原点者に手を出すことはなかった。セイゲルは手をおろした。
「分かった。わしが引くとしよう。じゃが引率はわしが最も信頼してるやつに託させてもらうよ。」セイゲルは振り返って彼の名前を呼んだ。
「ファーゼン」原点者が塞いだ通路の岩壁をファーゼンが砕き、姿を見せた。
「セイゲル、老体なんだから無理せんでおくれよ。」ファーゼンは議会の机に近づき、改めて挨拶をした。
「ご紹介に預かりました。わたしケストレア王国教師のファーゼンが彼の弟子アデルに付き添います。へカルテ様にその許諾をいただきたい。」ファーゼンの強い眼差しにそれまで口を開かなかったへカルテは目をつぶり力強く言った。
「良いでしょう。許可いたします。」
「へカルテ?!」コディスは驚いた表情でへカルテをみた。
「何事にも付き添いは必要よ。セイゲルの弟子はまだ16歳なんだから。でもねセイゲル、コディスの意見も分かって頂戴。ただ修行していたって成長するわけじゃないのはあなたも分かっているでしょう?戦って生き抜く術を、より多くの命を救う意思を劇的に育てる場所。そんな経験はどれをとったって戦場でしか得られないのだから。」ファーゼンはセイゲルにアイコンタクトをとり安心しろ、とそう語りかけるような目で見た。それを見たセイゲルは悩みながらも渋々へカルテのコディスの言い分を了承した。
医療班の二族は教会と王立神聖術学校へと配属された。アース族は教会の前に到着した。
「あら助っ人さん、いらっしゃい。」どこかで聞いた艶のある声がアース族を出迎えた。
「バレッサ先生!先生はどうしてここに?てっきり僕は学校側にいたかと。」驚いたアデルをみて微笑みながらバレッサは説明する。
「学校より教会の方が負傷者が来る割合が多いのよ。特に重度であれば迷わずこっちに来るわ。小さい頃から教会は鉄壁の加護と治癒の力で安全って教わってきたでしょう?だから学校より教会の方が私を必要としてる患者は多いわけ。」忙しそうに作業をしながらバレッサは説明した。その姿はいつもだるそうな彼女からは想像できないような表情をしていた。
「ほら手伝って。そのために来たんでしょ。」バレッサは大量の桶とバケツをアデルたちの目の前に置いた。
「よし、みんなやるか!」トウヤの掛け声にみんなが頷いた。
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次回は「滅びの行方」お楽しみに




