13話 開幕
ウルザス教団の話を聞きながら考えるアデル。
師匠とトウヤが用意してくれたトンカツを食べる。
朝日が昇る頃アデルは目を覚ました。今日はいよいよディジェクラント王国へ向けて出立をする。二階から降りると父母共に起きていた。
「アデルおはよう。良く眠れた?」食卓から母の声が聞こえた。
「おはよう母さん。まだちょっと眠いかも。」
あくびをしながら僕は答えた。
「でも見た感じ体調は大丈夫そうだ。」父が僕の顔を見ながら言った。
「朝食できてるから早く食べちゃって。」僕は椅子に座り朝食を食べ始めた。
「今回の合同演習は期間はどのくらいなんだ?」父が思い出したかのように質問した。
「今回は7日間だってファーゼンが言ってた。」僕の返答に父はあきれていた。
「先生をつけなさい先生を。それにしても例年に比べたら長いな。やはりディジェクラント王国はまだ魔獣が大量にいるのか。」父は顎に手を当てて考えていた。僕は黙々と朝食を食べる。
「なんにせよいい経験になることに変わりはないだろう。頑張れよアデル。」
「ゔぅ(うん)」最後の一口を食べ終え、返事をしたが上手く言えなかった。食事を済まして荷物を持ち、外ドア前に並べた。
「リュックよし、用具よし。」壁に視線を移し
「剣よし。」皮ベルトに剣を差し込み、リュックを背負った。
「行ってきます。」僕の声に両親は揃って答えた。
「いってらっしゃい、気をつけて。」僕は振り返り、手をふった。
ケストレア王国中央庁。
統括部や転移門など王国の中枢機能を担い、王の決定に基づいた方針を進行する。中でも転移門の管理運営が一番大変だ。村一つ分の大きさの円に神聖力をおよそ10秒間流し続けて国間を移動する。その規模の転移門が国ごとにあるため人の数も凄まじい。アデルは学校の生徒が集まっているディジェクラント転移門前に着いた。
「寝坊しなかったみたいだね。」声の方を向くとトウヤが立っていた。
「昔の僕よりは成長したろ。」僕の返答にトウヤは驚いていた。
「あれ?昨日アデル授業途中参加だったって聞いたんだけど。」僕は慌てて答えた。
「あれは普通に人助けをしていてだね、」
トウヤは僕の様子を見ながらクスクスと笑っていた。
「よしみんな教室ごとに並べ。」高等学長のシークス先生が号令をだし一同が整列を始めた。
「じゃあ後で。」トウヤはそう言って自分の列へと向かった。僕も自分の列に移動し、点呼や荷物チェックをした。
「各列全員確認が出来たため、これよりディジェクラントへ出立する。一同転移門に前進。」生徒一同が一斉に動いた。転移門に着くとシークス先生が管理棟に向けて手を上げた。次の瞬間地面から白い光を放つモヤが出現し、円内を囲うように天井に向かって広がった。辺りが白一面に包まれた頃、体に突如強い負荷がかかった。これは移動している証拠らしい。僕は立っていられるが、術師の大半はこの負荷に耐えられない。負荷が無くなり白いモヤは天井からガラスのように砕け始め、見えてきた景色はケストレア王国とは異なり、緑の生い茂る森林が目に入ってきた。
町の様子も石材ではなく、木造で出来ているものが多い。
「よし転身して下がれ。」人々が行き交う中を僕を含め他の生徒達も掻き分けて後ろへ下がる。
「そのまま中央通りを下って城門まで行進し続けろ。」町の構成はそこまで違いがないようだ。十字の大通りの先に主要施設が並びその交差する場所に中央庁がある。唯一違いがあるとすれば人が少ない点だろうか。家々も廃墟と化したものが目の端に映った。
城壁に到着すると階段が見えた外敵の侵入を極力防ぐためだろうか、壁門に階段が備わっている。数百段の広い階段を生徒達が下り、外を見ると空が広がっていた。流石高山にそびえ立つ国だなとアデルは思った。階段を下りきると、下には野営テントが無数に設置してあった。各国の学校や役職ごとにあるためそれぞれ看板が立てられている。その中の受付所で生徒数や健康状態をチェックする。
「次の方」受付員に聞き覚えのある野太い声が聞こえた。
「ケストレア王国所属アデルです。」その大男は少し老けていたが面影があった。
「お前エドレスの息子か。」
「ガイアスさん?!」
思わぬ再会だ。まさか近衛の団長が受付を担っているとは。
「君の名前はアデルと言うんだね。」驚いた表情で聞いてくるガイアスさんを見て戸惑いながら答えた。
「はいアデルです。」その言葉を聞いてガイアスさんは深く息を吐いた。
「大きくなったな。もう10年近く経つのか、あの頃から。」僕の心が少し締め付けられるのを感じた。
「よし確認取れた。通っていいよ。」そう言われたので、僕は学校のテントに向かった。テント内には先に着いていた他の生徒とファーゼンが居た。
「おうアデル、居眠り坊主も合同演習ともなればそんな険しい顔をするんじゃな。」自分では気付いていなかったが思ったより緊張しているらしい。
「坊主は余計ですよ。もう子供じゃないですから。」その言葉にファーゼンは少し笑った。
「私達からしたらみな子供みたいなもんじゃよ。」続く言葉を遮るかのように拡声術式の発音が響いた。
「まもなく合同演習開幕式を行います。皆さん野営テント後方の広場に集合してください。繰り返し放送します。まもなく•••。」
13話を読んでいただきありがとうございます。
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次回は原点者お楽しみに。




