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君たちだって、同じことを願うはずさ

 放課後、名門秋月高校の校内は、新垣正を探す卒業見込みである生徒たちが探し周り、騒がしくも、活気があった。

 

 その生徒へと、歌姫桃色が歌う――青春を、放送部は流していた。

 


 ***

 


 ほんの些細なことだよ、もうわかってんだよ

 あれこれ悩んだって、解決なんてするわけないじゃない

 どんな困難だってさ、君とならやれそうなんだ

 掴んだ、その手を決して、離したりしないで欲しいんだ


 

 ***

 

 

「やっぱり。いい曲」


 

 探していた有留も立ち止まり、それに聴き入っていた。


 

「てか。ジョージに、アーノルド……っ暗!」


 

 普段から明るいモチベーションが売りの二人だった。今さっきのやりとりに、やっぱり、違和感はあったようだった。


 

「どんな困難だってさ、君とならやれそうなんだ! 掴んだ、その手を決して、離したりしないで欲しいんだ。君となら生きて行きたいんだ!」


 

 力強い口調で、有留も口ずさんだ。

 

 校舎を駆け巡る生徒たちも、桃色の歌を歌っていた。

 


 ***

 


 戦うことが正義だと、君を護ることが勇気だと

 強さは間違いじゃないのさ、案外、その通りなんだ

 一緒に進みことだって、意外といけそうなんだ

 掴んだ、その手を、離して欲しいんだ



 ***


 


「君がいなくても生きていけるようにっ」

 


 ガララ!


 有留は大声で歌いながら、写真部へと、単身乗り込んだ。

 

 写真部は十ニ人中十二人が女生徒だけの異色の部活でもある。

 

 そこの卒業見込みでもあり、元部長の本田伊代は新垣とは蜜時期で、大変仲がよかった。幼馴染でもある分余計に。


「あ。有留先輩、うっさいんだけど」

 

 現部長の高松(アヤ)が険しい顔で、有留を睨んだ。


 

「桃色を歌ってなにが悪い!」

 

「あたし、その歌が大嫌いなの」


 

 クスクス。

 

 部室に残っている部員が、笑いを堪えていた。


 

「桃色が嫌いな奴初めて見た気がする」

「へぇ」

「! そ、そうじゃないっ、新垣を出せ!」

「いないし」

「嘘をつくんじゃない! あいつが最後に来るのは、ここしかないんだぞ!」


 

 有留は扉を強く叩いた。


 

「いないし」


 

 扉を乱暴に叩かれ、高松も不機嫌になっていく。


「いないし」


 にこやかに、ドスの効いた声で高松は有留を威圧する。


 

「! 本田はどこだ! あいつなら知ってそうだっ」

 

「知らないし。元部長のことなんて」


 

 素っ気なく答える高松に、有留は肩を動かし両耳に手を添えて見せた。


 

「お前さんには、通路の騒がしい声が聞こえないかい?」

 

「うっさいよね」


 

 情に訴えようとするも、高松に軽く流されてしまう。

 

 がくりと有留も項垂れてしまう。


 

「わかったんなら、ご退場お願い出来ますぅ~~?」


 

 バイバイと手を振る高松に捨て台詞を吐いた。


 

「三上生徒会長に言いつけてやるぅ! ばぁ~~か、ばぁ~~か!!」

 

「! うせろ、禿っ」


 

 高松の頬は、一瞬で朱に染まる。

 

 それは、明らかな怒りを表していた。

 

「禿ちゃうわ!」の捨て台詞を最後に、ようやく有留は部室を後にする。


 

「文ちゃん部長、お顔、真っ赤かですわよ」


 

 窓際の掃除用具入れに背を置いていた堂本千景が冷やかす。


 

「うっさいな……あの野郎!」


 

 高松は三上生徒会長が大嫌いだった。

 


「あいつ行った?」

 


 堂本の後ろから声がした。掃除用具入れからだ。

 


「……ええ、行きましたよ。新垣先輩」

 


 そう。有留もときの勘は当たっていたのだ。

 

 新垣の頼りは、本田が残した写真部、そして、後輩の高松。


 ガチャ。ギィいいい。


 恐る恐る、辺りを伺うように、子猫のような仕草で彼は、新垣はその姿を現した。

 


「じゃ。先輩。ちゃっちゃっとやっちゃいますか」

 

「あ……うん。お願いします」

 


 これから新垣は、この校舎から抜け出るために、写真部の部員に身を任せるのだ。

 


(これで。これで、いいんだ……うん)

 


 高松、そして新垣の胸中は、こんな言葉に占められ、浮かない顔色をしていた。

 もうちょっと、お付き合いください。

 長編にはなり得ませんので。

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