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私がチームを焼き尽くしたことのすべて  作者: 島流しパプリカ


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9/10

九 火の後

さらに三か月後、深夜に全社クラウド基盤で障害が起きた。


私はもう別のチームに移っていたが、関係者として対応会議に呼ばれた。

画面には二十人以上がいた。若いエンジニアたちが、速い言葉で状況を共有していた。


小野寺がいた。

顔は痩せていたが、目は前より落ち着いていた。


障害は、顧客影響の切り分けが難しいタイプだった。

技術的な原因調査は進んでいたが、どの顧客に、どの順番で、何を伝えるかが決まらなかった。


小野寺が発言した。


「先に、影響を三段階に分けます。技術原因ではなく、顧客業務影響で分けましょう。北浜のときに使っていた判断表があります。標準に合わせて直してあります」


彼は画面を共有した。


そこには、宮下さんのファイルをもとにした表があった。

北村さんの問い合わせ初動テンプレートも組み込まれていた。

顧客が知りたいこと、まだ言ってはいけないこと、第一報の粒度、営業部門への渡し方。


若いエンジニアの一人が言った。


「これ、めちゃくちゃ助かります」


めちゃくちゃ。

それは雑な言葉だった。

でも、私はその雑さに救われた。


障害対応は朝方に収束した。

大きな顧客影響は出なかった。


会議が終わる直前、小野寺が私に個別メッセージを送ってきた。


> あの運用、古くなかったです。

> 置き場所が古かっただけでした。


私は画面を見た。

何度も読んだ。

返事を書こうとして、消した。

また書いた。


> そう思います。


それだけ送った。


窓の外が少し明るくなっていた。

空はきれいではなかった。

曇っていた。

ビルの隙間に、朝が灰色に滲んでいた。


私はコーヒーを買いに行った。

自販機の前で、胃の痛みが少しだけ引いていることに気づいた。


救われた、とは思わなかった。

許された、とも思わなかった。

そんな便利な結末は、会社にはない。


ただ、燃えたあとに、何かが使われていた。

誰かの手に渡り、別の現場で、別の名前で、まだ働いていた。


それは、私が壊したものの残骸ではなかった。

完全ではないが、種に近かった。

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