八 解散
半年後、北浜商事向け運用高度化チームはなくなった。
正式には、三つの機能に分かれた。
顧客対応はカスタマーサクセス部門へ。
運用基盤はプラットフォーム部門へ。
レガシー連携の一部は、縮小された保守チームへ。
解体ではない。
再編である。
会社の発表にはそう書かれた。
最後の日、私は小さな会議室で、残っていたメンバーに話した。
大げさな送別会はしなかった。誰も望んでいなかった。
「長い間、お疲れさまでした」
言った瞬間、あまりに軽くて嫌になった。
長い間、とは何だ。
私は半年しかいなかった。
宮下さんが、机の上に一冊のファイルを置いた。
「北浜商事 運用判断集」
表紙には、そう書かれていた。
手書きではなかった。
テンプレート化され、検索でき、タグがつき、インシデント管理標準の形式に揃えられていた。
「完璧ではありません」
彼は言った。
「でも、燃やしても煙が少ないくらいにはなりました」
私は笑いそうになった。
笑えなかった。
「ありがとうございます」
「佐伯さん」
「はい」
「私は、あなたのやり方は今でも嫌いです」
会議室が静かになった。
「はい」
「でも、あのままだったら、たぶん誰も読まないノートを抱えたまま定年になっていました」
彼はファイルを軽く叩いた。
「これは、少しだけましです」
少しだけ。
それで十分だった。
それ以上を望む資格は、私にはなかった。




