七 変化
変化は、劇的には進まなかった。
北村さんは二か月休んだ。
復帰後、私とは目を合わせなかった。
彼女は結局、カスタマーサクセス部門へ移った。送別会には来なかった。
後日、共有フォルダに「問い合わせ初動整理テンプレート」というファイルを残していった。作成者は北村。更新日は、退職でも異動でもない、ただの水曜日だった。
宮下さんは、週に二回、標準化ワーキングに出るようになった。
最初の一か月は、ほとんど私の案を否定するだけだった。
「それは現場では使えません」
「その分岐は足りません」
「通知先が違います」
「顧客が怒るポイントはそこではありません」
私は何度も苛立った。
何度も「では案を出してください」と言いそうになった。
実際、一度言った。
宮下さんは「出しています」と言った。
私は黙った。
小野寺は新しい部署で苦労していた。
クラウドの用語がわからない。会議の速度が速い。英語のドキュメントが多い。
一度、夜遅くにメッセージが来た。
> 自分は、古い運用しか知らなかったんだと思います。
私はしばらく考えて、こう返した。
> 古い運用を知っている人が、いまの運用を作ったほうがいい。わからないことは、わからないと言っていい。
送信してから、偉そうだと思った。
消したかった。
でも、既読がついた。
彼から返事はなかった。




