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十 火の跡
数週間後、私はまた別の会議室にいた。
新しいチームだった。
古い顧客を抱え、古い手順を抱え、古い誇りを抱えたチーム。
資料はまだ作っていない。
人事からは「早めに方向性を出してほしい」と言われていた。
事業責任者からは「今回も佐伯さんらしく進めてください」と言われていた。
佐伯さんらしく。
その言葉を聞いたとき、胸の奥に小さな火がついた。
いつもの火だった。
どこが詰まっているか。
誰が動けるか。
何を切るか。
どこから燃やすか。
私は鞄の中のノートを開いた。
一ページ目に、前のチームで最後に書いた言葉があった。
火を入れる前に、何が生きているかを見る。
会議室のドアが開き、メンバーが入ってきた。
警戒した顔。疲れた顔。こちらを試す顔。
見覚えのある顔ではない。
だが、見覚えのある表情だった。
私はモニターをつけなかった。
資料も配らなかった。
最初に、こう聞いた。
「このチームが、これまで守ってきたものを教えてください」
誰もすぐには答えなかった。
当然だった。
信頼は、質問一つで生まれない。
沈黙が続いた。
空調の音がした。
誰かのペンが、机に当たって小さく鳴った。
私は待った。
火は、まだつけなかった。




