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私がチームを焼き尽くしたことのすべて  作者: 島流しパプリカ


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5/10

五 茶封筒

宮下さんが私のところへ来たのは、北村さんが休みに入ってから二週間後だった。


金曜日の十八時半。

フロアには人が少なかった。

彼は茶封筒を持っていた。


「少しよろしいですか」


会議室に入ると、彼は封筒から紙の束を出した。

手書きの運用メモだった。

古い障害、顧客の業務カレンダー、口頭でしか伝わっていない例外処理、営業部門の締めルール、担当者ごとの癖、過去に失敗した自動化案、その理由。


紙は厚かった。

角が擦れていた。

何年も開かれ、閉じられてきた跡があった。


「これ、全部スキャンして共有してください」


私は言った。

また、正しいことを言った。


宮下さんは首を振った。


「その前に、読んでください」


「もちろん読みます」


「いえ。共有するためではなく、読んでください」


私は黙った。


「燃やすなら、読んでから燃やしてください」


その言葉は、怒鳴り声ではなかった。

むしろ、疲れた声だった。

怒りはもう、通り過ぎていた。


私は紙束を受け取った。

重かった。

紙の重さではなかった。


その夜、私は会社に残って読んだ。

一枚目には、こう書かれていた。


 北浜商事 月末処理

 失敗するのは処理ではなく、たいてい連絡である。


二枚目。


 障害時、情報システム部は強く出るが、

 営業側はもっと怖がっている。

 情報システム部長の語気が荒いときは、

 営業本部長から詰められている可能性が高い。

 先に営業影響を一文で整理して渡すこと。


三枚目。


 自動化できるもの

 自動化してはいけないもの

 自動化する前に顧客側の業務を変える必要があるもの


私は読み進めた。

そこには、私が「属人性」と呼んだものの正体があった。


それは怠慢ではなかった。

記録されなかった知性だった。

仕組みに昇格されないまま、人の身体に押し込められていた運用設計だった。


私は、その夜はじめて、自分が何を燃やそうとしているのか、少しだけわかった。


二十二時過ぎ、事業責任者からメッセージが来た。


> 進捗どうですか。

> 来週の会議で再配置案を出せますか。


私はしばらく画面を見ていた。

そして、こう返した。


> 出します。ただし、再配置案だけでなく、

> 知識移管と役割再設計の案も出します。

> 単純な縮小だと壊れます。


すぐに既読がついた。

返事はなかった。


その沈黙で、私は少しだけ救われた。

止められなかったからだ。

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